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目安は150km圏内…「地産地消」トラック物流網で24年問題乗り越える

物流の壁を越える #3
目安は150km圏内…「地産地消」トラック物流網で24年問題乗り越える

配送に伴う付帯作業の効率化も重要なポイント

量販店などの需要先への製品配送では、「地産地消」型のトラック物流網を構築するのが効率化に有効だ。1人のドライバーが時速30キロ―40キロメートルで1日に配送すると仮定すると、配送できる範囲は150キロメートル圏ほどと想定。酒類・飲料メーカー各社がこれを目安として、全国の配送拠点構築を進めている。また配送に伴う積み込みや得意先での待機を減らせれば、輸送時間を稼げる。各社がそれぞれに効率化を進める。2024年4月までに残された時間は多くない。

アサヒグループジャパンは「主な配送拠点ごとに150キロメートルの円を描き、需要先への配送をそのエリア内で完結できるようした」(井石明伸SCM部副部長)と説明。サッポログループも「配送拠点の再編を進めてきた。東名阪の需要地を中心に、配送拠点からの納品距離を150キロメートル圏内に設定した」(サッポログループ物流・井上剛ロジスティクスソリューション部長)と明かす。それでも「東北や北陸、中・四国エリアでは課題が残る」(同)と、さらなる対策が必要になっている。

また、キリンビバレッジは「全国を7ブロックに分け各ブロック内で(製品配送を完結する)自給率を高める」(天野雄一朗SCM部主幹)戦略を採る。製品を自社と外部の協力会社(パッカー)に委託して生産しており、ブロック内自給率を高めて長距離輸送なしで完結する体制をつくるという。平均自給率は51%から北海道エリアを拡充し60%ほどに高まったとする。

配送に伴う作業などの効率化も重要なカギになる。アサヒグループは「ドライバーの走行時間を確保するため実態把握を実施している」(井石副部長)と取り組みを説明する。動態管理システムを活用しドライバーの状態を「走行中」「待機中」などのステータスで“見える化”し、収集データを基に対策を打ち出す。またすでに「D+2」の体制を導入し、それ以前の注文を受けた翌日納品から、翌々日納品に切り替えている。中1日のリードタイムをつくり効率配送の準備ができる。

キリングループは「配送1運行当たりの効率化を高めるため、『発』と『着』での作業効率を上げる」(松井志成キリンビールSCM部主幹)方針。工場内では2―3回停車しながら製品を積み込むため滞留時間が長い。これを集約化する試みを進める。また店頭での待機時間を削減する。午前中に納品が集中しやすいため、平準化するように調整する。

酒類・飲料メーカー各社は物流効率化の取り組みを多方面から強化しており、24年4月の期日に慌てる様子はない。ただそれ以降も輸送能力不足の拡大が予測されており、物流効率化のさらなる強化が必要になることは確かだ。(編集委員・井上雅太郎が担当しました)

日刊工業新聞 2023年11月23日

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