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電力新興買収・豪大手と提携…伊藤忠が蓄電池事業拡充、再生エネの需給調整力磨く

電力新興買収・豪大手と提携…伊藤忠が蓄電池事業拡充、再生エネの需給調整力磨く

伊藤忠の家庭用蓄電池は太陽光由来の電力の自家消費ニーズを捉えて販売を伸ばしている

伊藤忠商事が太陽光発電などの電力需給を調整する蓄電池事業を一段と拡充している。人工知能(AI)で充放電を最適制御する家庭用蓄電池では電力取引のスタートアップを買収し、需要家間で余剰電力を直接売買する「ピア・ツー・ピア(P2P)」取引の実装を図る。系統用では蓄電所開発大手の豪州アケイシャ・エナジーと提携して蓄電所開発を強化する。出力の不安定な再生可能エネルギーなど分散型電源の需給調整ネットワークを構築して脱炭素を推進する。(編集委員・田中明夫)

累計出荷が6万台弱の伊藤忠の家庭用蓄電池では、資本提携先の米ルナーエナジーのAIが太陽光発電量の予測や電力消費パターンを基に充放電を最適制御する。再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)が2019年以降順次終了(卒FIT)することを見据えて強化してきたシステムが、電力の自家消費ニーズを捉えて販売を伸ばしている。

太陽光発電と蓄電池のある一般家庭の自家消費比率は平均55%だが、伊藤忠の蓄電池の卒FIT顧客は同74%と高い。他の商社が川上の発電事業から電力ビジネスに入る中、「消費者目線で蓄電池を追いかけながら展開してきた」(石井敬太社長)ことが川下の需給調整力につながった。

6月には東京電力ホールディングス傘下でP2P電力取引の技術開発を手がけるTRENDE(トレンディ、東京都千代田区)を子会社化した。家庭や店舗で余剰となった太陽光由来の電力などを直接売買できるネットワークの構築を図り、再生エネの有効活用を推進する。

また、産業・系統用の蓄電池では、中国の深圳パンドパワーとの資本提携を通じて電気自動車(EV)のリユース電池などを活用する。工場向けなどの産業用は累計約4000キロワット時の蓄電池販売実績があるほか、系統用では太陽光発電の導入が先行して出力制御が多発する九州地方などに蓄電所を建設する。

さらに9月にはアケイシャ・エナジーと業務提携した。32年の大規模太陽光発電所(メガソーラー)のFIT終了を見据えて国内を中心に大型の蓄電所開発を強化する。

家庭用の蓄電池販売は競争が激しさを増すが「売り切りではなく(充放電の最適制御による)需給調整力もあることが強み」(村瀬博章次世代エネルギービジネス部長)とし、今後はさらなる普及に向けて電力プランへのデータ活用なども検討する。25年に産業・系統用を含め100万キロワット時の需給調整力の整備を目指しており、再生エネ導入で広がる分散型電源の効果的な制御により脱炭素社会の実現を後押しする。


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日刊工業新聞 2023年10月17日

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