三菱商事・三井物産・伊藤忠…大手商社6社が当期減益だった理由
大手商社7社の2023年4―6月期連結決算(国際会計基準)は、資源価格の落ち着きを受けて6社が当期減益となったが、脱炭素化に向けて投資を積み上げる動きなどが進んでいる。三菱商事は再生可能エネルギーの欧州子会社関連で約250億円の投資を実行し、三井物産は環境配慮型メタノールのデンマーク企業に数百億円規模とみられる出資を決めた。低採算事業を売却しながら、成長分野に経営資源をシフトする。
4-6月期はロシアのウクライナ侵攻を受けて資源が高騰した前年同期の反動で当期利益が6社で減少したが、24年3月期業績予想に対する各社の進捗(しんちょく)率は2-3割以上と好スタートとなった。非資源分野を中心に業績に耐性が出ているほか、資産効率を改善する動きや脱炭素投資が進展している。
三菱商事は食品会社株式の売却などで資産入れ替えを進めたほか、欧州の再生エネ子会社エネコの持ち分利益が前年同期比2・6倍の173億円に膨らんだ。エネコ関連で約250億円の投資も実行し、「引き続き(中期経営計画で掲げる)循環型成長モデルによる資産効率の改善と成長戦略の着実な実行を進める」(野内雄三常務執行役員)とした。
三井物産は航空機売却などの資産リサイクルで520億円のキャッシュインがあったほか、グリーン水素などを活用してメタノール生産を始めるデンマークのカッソー・ミドコへの49%出資を7月に決めた。アンモニアや低炭素鉄源の協業でも進展があるなど「脱炭素関連の投資パイプラインを拡充している」(重田哲也専務執行役員)とした。
丸紅は電力事業の一過性要因を除く実態純利益が前年同期比2・7倍の160億円となった。発電事業のほか英国で再生エネの小売りを手がけるスマーテストエナジーの業績が好調で、電力分野の業績は「7-9月期以降、巡航化する」(古谷孝之専務執行役員)と耐性の強さに手応えを示した。
伊藤忠は4-6月期の投資実行は限定的だったが、再生エネの安定供給を補完する蓄電池事業を国内で着実に進めている。鉢村剛副社長執行役員最高財務責任者(CFO)は「社内の経営会議にかかっている(全体の)投資案件は前年に比べ倍増している」とし、今後の投資拡大の余地を示した。
商社大手は資源価格の変動に業績が揺さぶられやすい構造だが、次世代エネルギー事業で商機を捉えようとする動きも広がっている。低採算事業からの撤退などで経営基盤を強固にしつつ、成長分野への事業ポートフォリオのシフトを加速できるかがカギとなりそうだ。
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