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トヨタ・出光が協業…全固体電池が起こすパラダイムチェンジ

トヨタ・出光が協業…全固体電池が起こすパラダイムチェンジ

握手する佐藤トヨタ社長(左)と木藤出光社長

トヨタ自動車が次世代電池の量産に向けた方向性を明らかにした。出光興産と協業し、全固体電池における世界のデファクトスタンダードの獲得を目指す。国内外の自動車メーカーが2020年代半ばから30年に向け全固体電池を搭載した電気自動車(EV)の投入を表明。開発競争は激化している。「量産には課題が多い」とされる全固体だが、トヨタ・出光連合の実現力に注目が集まる。

トヨタは地域に最適なパワートレーン(駆動装置)を展開する「マルチパスウェイ(全方位戦略)」を進めており、EVは有力手段の一つ。この大前提を基に、EVの世界販売を26年に年150万台、30年までに30車種・同350万台に引き上げる計画を掲げる。

EVの主要要素である電池の進化はさまざまな方向性があるが、全固体は液系電池に比べ充電時間の短縮や航続距離の拡大、高出力化が可能だ。電解質が固体のため電気を伝えるイオンの動きが速く、動力性能が求められるスポーツカーや充電頻度が高い商用車などのニーズに対応する。

全固体の生産における課題は耐久性だ。正極負極と固体電解質の間に亀裂が発生し、電池性能が劣化する可能性がある。トヨタと出光では13年以降、この課題に対応し、柔軟性と密着性が高く、割れにくい固体電解質の技術を開発した。次の重点テーマが量産化であり、市場投入を着実に進めるために今回の協業を発表した。

全固体が実現すればEVの競争力はどう変わるのか―。「電池そのもので車の価値が一義的に決まるわけではない」と話すのはトヨタの佐藤恒治社長。ただ「全固体という要素が入ると車に起きるいくつかのパラダイムチェンジがある」という。例えば、液系電池よりエネルギー密度高く設定できるため空力に依存せず、開発の自由度が高まり魅力的なデザインにつながる。

一方、出光興産にとってトヨタとの協業は、石油ショック時から地道に研究開発を続けてきた成果が実を結ぶものだ。木藤俊一社長は「問われているのは夢ではなく実現力。トヨタを材料と技術力で支える」とした。

限りある燃料と言われた石油を有効活用するため、1990年代から石油製品の製造過程で発生する硫黄成分に着目。01年には用途をEV用の電池素材に絞り込み硫化物固体電解質の開発に着手した。この10年はトヨタとも共同研究している。特許出願も両社が圧倒的で、協業は自然な流れだ。

21年11月には固体電解質の小型実証設備を稼働、22年4月にはグリーンイノベーション基金事業に採択され大型パイロット装置を千葉事業所(千葉県市原市)に建設するなど量産に向けた検証を開始、さらに生産能力を増強し供給体制の確立を急いでいる。


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日刊工業新聞 2023年10月13日

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