ニュースイッチ

シリコーンにCO2吸収、NIMSが液化不要のスゴイ回収技術

物質・材料研究機構(NIMS)の一ノ瀬泉上席研究員と井上瑞基NIMSポスドク研究員は、シリコーン(PDMS)に二酸化炭素(CO2)を吸収させて回収する技術を開発した。CO2回収コストは1トン当たり約5000円。CO2が液体として得られ、地下貯留や運搬のために液化させる必要がない。天然ガス田からの高濃度CO2除去などの用途に提案していく。

深冷分離とCO2吸収を利用した液体CO2回収システム

低品質天然ガス田の産出ガスに含まれるCO2は3―7割に達する。これを深冷分離装置で冷やしてCO2液化し、メタンガスと分離している。だが10%ほどのCO2が残る問題があった。

そこでPDMSとCO2の溶解度パラメーターが近く、高圧下ではCO2がPDMSに溶け込む現象を利用する。深冷分離装置から排出される高圧混合ガスをPDMS粉末にさらしてCO2を吸収させる。PDMS粉末を10気圧程度の中圧まで下げるとPDMSからCO2が放出される。CO2は昇圧して深冷分離装置に戻す。

実験では深冷分離後の10%CO2ガスからほぼ全てのCO2を回収できた。PDMSの圧力変化でCO2を分離するためエネルギー効率が高い。CO21トン当たり5000円と試算する。天然ガスからのCO2除去では10本ほどの吸収塔を建てることになる。

プロセス全体としては液体のCO2が得られるため、あらためて冷やして液化するコストがかからない。CO2の地下貯留では圧入する必要があった。

詳細はNIMSが11日に東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開く「NIMS材料技術展示会2023」で紹介する。

日刊工業新聞 2023年10月10日

編集部のおすすめ