レモンサワーの次はこれだ!新たなRTDの定番づくり、メーカーの競争激化
ビール各社が需要喚起
ビール大手各社はRTD(フタを開けてそのまま飲めるアルコール飲料)で、レモンサワー以外の新たな定番作りに注力している。レモンサワーブームに乗って拡大してきたRTD市場が飽和しつつある。10月に増税された第3のビールからの需要のシフトが期待できることもあり、各社は需要喚起のため「食中酒」で「甘くない」をキーワードに新たなフレーバー商品を相次いで投入。次の定番をめぐる争いが激化している。(編集委員・井上雅太郎)
缶チューハイなどのRTDといえばレモンサワーが想起されるほど定番中の定番。これまで各社が競ってレモンフレーバーのRTD開発でしのぎを削ってきたが、2023年は様子が少し変わっている。サッポロビールが9月に8種類のスパイスを使ったRTD「サッポロ クラフトスパイスソーダ」を発売した。武内亮人常務執行役員は「RTDはレモンが多くを占める中で、新たな提案で強化する」とPRする。
キリンビールは本格麦焼酎を炭酸で割ったRTD「キリン 上々 焼酎ソーダ」を17日に発売する。メルシャン八代不知火蔵(八代工場)の本格麦焼酎の原酒を一部使用し、米麹抽出物や食塩を加えてクセのない爽やかな味覚に仕上げた。松村孝弘カテゴリーマネージャーは「特に和食に合う食中酒として提案する」と強調する。
また、サントリーはRTD「こだわり酒場のレモンサワー」の第2弾として、プレーン風味の「こだわり酒場のタコハイ」を3月に投入。7月にはジン「翠(すい)」のRTD「翠ジンソーダ缶」もリニューアルしている。「レモンサワーユーザーに限らずに、より多くのお客さまに酒場のように楽しんでもらいたい」(同社)と狙いを明かす。
10年ごろからのレモンサワーブームが市場をけん引して、22年は10年前に比べ市場規模は約2倍に拡大した。ただし22年の市場は前年割れとなり、ブームの陰りが指摘されている。他方、10月の酒税改正で増税になった第3のビールに対し、RTDは税率が変わらないため価格差が広がっている。キリンビールの堀口英樹社長は「中長期にみてRTDの需要は増えていく」と指摘しており、市場再活性化の好機とみる。
現在、市場はレモンサワー一辺倒で新鮮味が薄れつつあり、各社は次の火付け役としての新フレーバー開発を強化している。開発のポイントになるのが「食事の邪魔をしない食中酒」であることと、「スッキリと甘くないフレーバー」の2点だ。