チャーハンや回鍋肉…「大阪王将」で熟練職人のレシピを自動で再現、調理ロボがテスト稼働
テックマジック(東京都江東区、白木裕士社長)の調理ロボットが活躍の場を広げている。このほど、炒め調理ロボット「I―Robo」を飲食店「大阪王将」の東京都内の店舗に納入し、テスト稼働を始めた。チャーハンや回鍋肉など熟練職人のレシピを自動で再現し、調味から撹拌、加熱、調理後の鍋洗浄までの作業を自動化できる。大阪王将は国内で344店舗を展開する。約60種のメニューのうち20種類がロボで提供可能とし、実証を経て全国の店舗へ導入を目指す。(編集委員・嶋田歩)
「ロボ導入は10年前からドラム式、コンベヤー式と挑戦したが、うまくいかなかった。今回が3度目の挑戦だ」。大阪王将の植月剛社長は語る。うまくいかなかった理由はメニューの多さ。中華料理は炒め物だけでも回鍋肉や青椒肉絲、マーボー豆腐など多種多様で、火加減や具材の混ぜ方、入れるタイミングがそれぞれ異なる。ロボで「それらしき料理」を作ることはできても、食べてみると職人の味には及ばない。この壁をいかに克服するかが課題だった。
テックマジックは、大阪王将と突き合わせて一つ一つのメニューをITに落とし込むことで解決。半年かけて調理1級資格を持つ職人の鍋裁きを研究し、加熱温度や加熱時間、鍋の回転速度から回転方向まで細かくコピーし、I―Roboにプログラミングした。
厨房では、ロボの右側の端末画面に注文メニューに合わせて「最初に肉を入れてください」「ピーマンを投入してください」などと表示される。表示に沿って店員が具材を投入、ロボに調理をさせる仕組みだ。具材投入も自動化できるが、植月社長は「装置全体が大型になり価格も上がるため、あえて人力にした」と打ち明ける。
ロボの調理速度は人手とほぼ同等。ベテランでも新米バイトでも外国人でも同じように調理ができる利点が大きいという。大阪王将では1人前になるまでの調理研修に約半年かかる。その間、店舗側は人を多く雇う必要がある。「ロボでそれが不要になり、機械操作研修は3時間ほどで済む。鍋洗浄も人手だと水使用量が3リットルだが、ロボは半分で済むため節水効果も大きい」(植月社長)。電磁調理のため厨房が暑くならず、作業環境の改善も見込める。
テックマジックはパスタ専門店のプロントコーポレーション(東京都港区)にもパスタロボを納入している。外食産業の人手不足は各社共通であるだけに、実店舗経験を武器にカスタマイズ、拡販につなげる考え。