ニュースイッチ

トヨタが量産試作ライン設置へ、「バイポーラ型LFP電池」とは?

トヨタ自動車が次世代型車載電池「バイポーラ型リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池」の量産試作ラインを明知工場(愛知県みよし市)に設置する方向で検討していることが分かった。2024年内に構築することを目指す。同電池は小型化や部品点数を削減でき、低コスト化が見込める。トヨタは26―27年の実用化を目指しており、電気自動車(EV)の普及期における競争力の中核をなす電池として量産技術の確立を急ぐ。

トヨタは豊田自動織機と共同で、バイポーラ型LFP電池の開発を進めている。大きな板状の電池で、正極と負極を一つの構造体に集約できると同時に正極材に調達しやすく安価なリン酸や鉄を使う点が特徴。市販中のEV「bZ4X」に搭載するリチウムイオン電池(LiB)と比較してニッケルやコバルトといった希少金属を使わない。このほか部品点数を4分の1から5分の1減らせ、航続距離を20%延ばす一方、コストは40%抑えられると見込んでいる。

現在、トヨタ貞宝工場(愛知県豊田市)や豊田織機で小規模な試作ラインを設けて開発を進めている。量産を視野に試作ラインの規模を一段引き上げ、実用化に向けた生産技術の確立や、品質の確認などを行う方針だ。

量産試作ラインを構築予定の明知工場は、元々鋳造部品や駆動部品の生産拠点。24―26年にはLiBの生産開始を予定しており、電池生産拠点としての色合いを強めている。EVシフトの進展に伴う内燃機関需要の減少を見据え、既存工場の生産品目の転換を進める狙いもある。

トヨタは電池子会社も含め、国内の車載電池生産に約3300億円を投じ、生産能力を年25ギガワット時(ギガは10億)に増強する計画を掲げている。


【関連記事】 トヨタグループも頼りにする異能の変革集団
【関連記事】 トヨタの世界戦略を支える強力な「日独連合企業」
日刊工業新聞 2023年09月19日

編集部のおすすめ