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不審者を見逃さない、AI警備システムの仕組み

アジラ(東京都町田市、木村大介社長)は、大型商業施設や公共施設などに設置した多数のカメラ映像から、人工知能(AI)が異常行動や不審行動を検出する、AI警備システムを提供している。骨格の動きから人を同定する「行動認識AI」という独自の手法を採用しているのが特徴。新丸の内ビルディング(東京都千代田区)や阪急西宮ガーデンズ(兵庫県西宮市)など22の集客施設に導入されるなど、着実に普及を進めている。

大規模集客施設には、何百台ものカメラが設置されているが、施設管理者がすべてのカメラ画像を見続けることは、大きな負担になっている。結果として、事件や事故の発生を見落とすことも多い。また、カメラ画像の解析では、顔認証が実用化されているが、個人が特定されてしまうという課題もあった。

同社はこれに対して、人の骨格の特徴的な動きをもとに、異常行動(転倒・卒倒、けんか・破壊行為)や不審行動(ちどりあし・ふらつき、長時間の滞留、違和感行動)などをAIが認識し、分類して管理者にアラートを通知することを可能にした。

解析画像は骨格の構造を示したものであるため、万一外部に画像が流出しても、個人が特定されづらい。

行動認識AIは、東京工業大学情報理工学院の篠田浩一教授と共同開発した。人がしゃがんでいるだけなのか、倒れているのかなど、正常な行動と異常行動をAIが識別する姿勢推定AIで、世界トップクラスの技術を目指している。

また、解析技術は事件や事故の検出だけでなく、来店客の入店から購買までの行動を把握することで、店内レイアウトの最適化や従業員の配置の効率化など、さまざまな活用にも応用できる。

ただ、来店客の中には自分がカメラでトラッキングされることに抵抗を感じる人もいる。導入店舗は、AI警備をしている事実をどこまで客に伝えるべきか悩ましい面もある。

そこで同社は「大学や企業の関係者による有識者会議を設置し、当社のシステムで個人の行動の導線をつなげることの法律的な問題点を検討する」(木村社長)取り組みにも着手した。今後関係省庁にも確認し、安心して導入できる環境整備を進める考え。

「導入した企業が、AIで警備していることをブランドとして使ってもらえるようにしていきたい」(同)と、技術開発と同時に社会がAIを受け入れる仕組みの構築にも力を入れていく。(赤穂啓子)

日刊工業新聞 2022年12月23日

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