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未知の環境に最初のインフラを作る…土木と宇宙をつなぐロボット技術の今

土木と宇宙をつなぐロボット技術の開発が進んでいる。地上では土砂崩れ後の河道閉塞(かどうへいそく)の復旧工事、宇宙では月面発着場の建設を題材に、ロボットが動的に協働するシステムを構築する。災害現場も月面も配備できるロボットが限られる。そこで小さなロボットがチームを作り、状況に応じて分担を動的に切り替え対応する。未知の環境に最初のインフラを作る試みだ。不確実性を乗り越え人類の活動領域を広げようとしている。(小寺貴之)

月面発着場整備向け小型ロボ

「小さなロボットに大きな仕事をさせたい。目安は3トン。ヘリコプターで運べる重量から設定した」と東京大学の永谷圭司特任教授は研究コンセプトを説明する。内閣府・科学技術振興機構(JST)のムーンショット型研究開発事業でプロジェクトマネージャー(PM)を務める。

国土交通省地方整備局には分解組立型バックホーが配備されている。土砂災害が起きたらヘリで空輸し、現地で組み立て、遠隔操作で施工する。このバックホーの1パーツの重量が約3トンになる。つまり建設ロボの重量を3トンに抑えれば、現地に空輸し、そのまま工事を始められる。機体が小さく、施工能力で劣る点は連携で補う。

ロボット化したクローラーダンプ(成蹊大提供)

宇宙開発も運べる重量が限られる。小型ロボが連携して不確実な環境で施工する。そのために必要になるのが動的協働システムだ。東大の淺間一教授らはロボットがチーム編成し直す自律分散システムを開発した。バックホーがリーダーとなり、複数のダンプを従えるチームを作る。施工が計画よりも遅れたら、他のチームと交渉してダンプを分けてもらい、施工能力を上げる。人間は個々のロボやチーム、それぞれの単位で指示管理する。

これは一人称視点のアクションゲームのように建設ロボを操縦してきた業務を、建設現場のシミュレーションゲームに変えるようなインパクトがある。永谷特任教授は「機体やチームの階層を行き来しながら状況に対応できる」と説明する。

センサーポッド(九大提供)

ロボットの機体の開発も進む。成蹊大学は小型建機を後付けでロボット化する技術を開発。九州大学は施工現場に配置しロボや安全を監視するセンサーポッドを開発した。月面発着場の建設に向けては慶応義塾大学が月の砂をならして締め固める小型ロボを開発した。4脚ロボが地盤の固さ計測や締め固め機構などユニットを付け替えて仕事をこなす。慶大の石上玄也准教授は「月面に運べる機体は限られる。1台が何役も担える設計が望ましい」と説明する。

災害復旧と月面で働く機体は変わる。だが限られたサイズの機体が連携し大規模な工事をする点は共通だ。動的協働システムが、その管理を容易にし、現場の運用に柔軟性をもたせる。そしてセンサーポッドや小型建設ロボは中小規模の工事への実用化が見込める。土木工事の自動化はダム建設や鉱山開発などの大規模現場に限られてきた。中小の現場は環境が多様で変化も早い。臨機応変の対応力を磨くことで社会実装につなげていく。

日刊工業新聞 2023年08月21日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
建設ロボの実証実験では6台を準備していました。ところが開始前に1台動かなくて5台になり、開始するとさらに1台動かなくなくて4台体制となり、シガーソケットの接続が悪かったと判明して5台体制に復帰してと、台数がころころ変わりました。研究者はあたふたしても建設ロボはチームを編成し直してたんたんと土砂を運んでいました。はからずも災害現場でのトラブル対応が再現されていました。トラブルはゼロにはならないので、トラブル対応に集中できるシステムは有用だと思います。

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