北大が海氷量の経年変動特性を解明した意義
北海道大学低温科学研究所の豊田威信助教らは、オホーツク海南部の海氷量の経年変動を捉えることに成功し、その変動特性を解明した。オホーツク海北部や中部とは変動特性が異なり、海氷体積の増加には熱力学的な結氷条件よりも、氷盤同士の力学的な積み重なりが重要であることが分かった。気候変動による海氷の将来予測につながるほか、春先の海氷融解の予測精度が向上し、船舶の海難事故防止にも役立つ。
北緯46度以南のオホーツク海南部は、世界で最も低緯度に位置する海氷域。衛星観測で海氷面積変動は分かるが、氷厚や体積量は推定が難しく、これらの経年変動は知られていなかった。
北大低温科学研究所は第一管区海上保安本部と共同で1996年から毎年海氷観測を実施しており、このデータから各年の平均氷厚などを見積もった。これと衛星データを組み合わせ解析した。
その結果、オホーツク海全体の海氷面積は10年間で約7%の割合で減少しているが、減少傾向を示すのは北・中部で、南部は逆に微増傾向であることが分かった。
南部では、壊れた氷が壁状になったリッジ部分が海氷体積の約7割を占め、氷盤が積み重なる力学的過程の氷況への影響が大きい。そのため、温暖化傾向でも海氷面積が増加したと考えられる。
また、リッジの生成について、氷を塑性体として扱った従来の海氷力学理論で説明できることを示した。数値海氷モデルの精度改善が見込まれる。
日刊工業新聞 2022年12月15日