危険箇所を災害検知する、地域情報写真配信サービスの仕組み
アーベルソフト(埼玉県坂戸市、西岡和也社長)は、ITで水害などから地域の人や財産を守る地域情報写真配信サービス「ビューちゃんねる」を運用している。電柱に取り付けた定点カメラで危険箇所の情報を取得。河川や道路の状況をリアルタイムに確認できるほか、冠水などを人工知能(AI)が判断し、メールを配信して危険を周知できる。ゲリラ豪雨や大型台風が頻繁に発生する中、迅速な災害対応の実現に貢献していく。
ビューちゃんねるはIPカメラで取得したデータをLTE網でサーバーに送信。サーバーを経由して専用ホームページやケーブルテレビなどで提供する仕組みだ。河川の水位やアンダーパスなど冠水を確認し、画像を数分おきに送信する。
IPカメラは防水・防塵対策を施し、夜間は赤外線に自動で切り替えることで雨天や夜間でも鮮明な撮影が可能。撮影した画像はサーバー上でAIによるマスキング加工を行い、車や通行者のプライバシーにも配慮した。
災害時に速報やアラートを送るサービスはある。ただ、ビューちゃんねるは「地元の人しか知らないような危険な箇所をピンポイントで撮影できる。地元がどうなっているのか、知りたい情報が分かる」(西岡社長)。自治体の要望に合わせて、カメラの移設・増設も柔軟にでき、通常時と災害時などで撮影の間隔を遠隔で変更することも可能だ。
近年100年に1度の災害が頻発している。2019年10月の台風19号では自然災害が少ないと言われる埼玉県でも河川の越水・氾濫、道路の冠水、住宅地への浸水被害が発生。住民の避難をはじめ、自治体職員などは被害状況の確認や危険箇所の見回りに追われた。「必要な情報を得られれば、状況の確認や避難の判断など初動が変わる」(同)。
同サービスは台風被害を契機に、20年に埼玉県毛呂山町の要請を受け、地元ケーブルテレビと協力して開発した。経済産業省の地域経済牽引事業計画の事業者承認も得た。現在までに毛呂山町に計11台、埼玉県朝霞市に23台、同志木市に7台を導入。今後も他地域に広げていく方針だ。
同社はITシステムの開発からインフラ構築まで一貫したサービス提供が強み。今後はビューちゃんねるのデータの活用や、学校の通学路、医療施設の周辺地域などでの採用を働きかけていく。西岡社長は「AI、IoT(モノのインターネット)の活用で地域防災のDX化に貢献したい」と力を込める。(川越支局長・村上毅)