ニュースイッチ

NTTコムウェアが実証加速、低遅延通信技術「APN」とは?

NTTコムウェアが実証加速、低遅延通信技術「APN」とは?

ロボットの映像分析でIT機器のランプ表示のリアルタイム点検も行える(NTTコムウェアによる実証)

産業用途でNTTの低遅延通信技術「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」の実証実験が加速している。NTTコムウェア(東京都港区、黒岩真人社長)は、APNを用いてロボットの遠隔リアルタイム制御を行い、データセンター(DC)の運用を省人化する実証を始めた。インフラ整備や工場の運用保守業務向けにも横展開し、将来はAPNを活用したスマートファクトリー(つながる工場)の実現を目指す。(編集委員・水嶋真人)

APNはNTTの次世代光通信基盤の構想「IOWN(アイオン)」の構成要素で、ネットワークから端末までを光で結ぶ。通信速度は毎秒100ギガビット(ギガは10億)、離れた場所への映像伝送の遅延は数ミリ秒(1ミリ秒は1000分の1秒)規模と従来の約200分の1に抑えられる。

実証では、NTTコムウェア本社が入居する東京・品川のビルと五反田のビルの間を芯線長約30キロメートルの光回線で結んだAPNテストベッド(試験環境)を活用した。

品川のビル内のパソコンから五反田のDC内にあるロボットに、IT機器を収納するラックの増減を画像で識別するよう、APN経由で指示。ロボットは搭載カメラを通じ、各設備に付けた2次元コード(QRコード)で情報を読み取る。カメラやセンサーから取得した温度や音の情報も分析し、仮想空間上に再現したDCを最新の情報に更新する。

NTTコムウェアIOWN推進部の都筑佳紀技術戦略部門担当課長は「ネットワーク遅延が大きくなると現場の状況と操縦者の判断がずれ、急に飛び出してきた人とロボットの接触が起きかねない」と説明する。APNの活用により、こうした事態の未然防止につながりそうだ。ロボットが配信する映像分析でサーバーなどIT機器の稼働状況を示すランプのリアルタイム点検も行えるようにした。

こうした遠隔制御ロボが収集した各種情報を仮想空間上で蓄積し、シミュレーションを行うことでDC運用の効率化につなげる。「ロボットが得た情報を人工知能(AI)が判断して最適な行動や機器配置を行えるようにする」(都筑担当課長)ことを目指す。

NTTコムウェアは品川にいる卓球選手の映像を五反田に設置した画像処理半導体(GPU)で解析し、仮想現実(VR)上で卓球をプレーできる仕組みの実証も進めてきた。NTT西日本は離れた場所にいる2人の漫才師がAPNを用いて漫才を行う実証を3月に行った。従来はゲームや娯楽、芸術といった分野でAPNの実証が行われてきたが、一般企業の利用を想定した分野での実証も増えていきそうだ。

日刊工業新聞 2023年月8月29日

編集部のおすすめ