ジャパンディスプレイ（ＪＤＩ）は第５世代通信（５Ｇ）で使われるミリ波帯の電波の反射方向を任意に変更可能な人工構造体「メタサーフェス」の液晶反射板の大型化に成功した。従来製品は８・８センチメートル角だが、このほど２５センチメートル角まで拡大。実用レベルの大きさとして４枚の反射板をタイル上に並べて運用することも可能とした。５Ｇのサービスエリア拡張に貢献できる製品と位置付け、企業や自治体などでの導入を目指す。

ミリ波は２８ギガヘルツ帯（ギガは１０億）など高周波数帯の電波を指す。使う帯域幅も広いため、高速の通信サービスを提供できる。一方で電波の直進性が強く、障害物に弱い特性があるため、ビルや樹木の後ろなどに電波の届きにくい場所（カバレッジホール）が発生しやすくなる。

ＪＤＩが開発した液晶反射板は、ディスプレーなどの光制御に使う液晶を電波の反射制御に応用し、ミリ波を任意の方向に反射可能としている。また鳥取工場（鳥取市）の量産ラインを使い、大型化を可能にした上、反射板のつなぎ目を工夫して電波の干渉を防ぐなどし、複数枚を並べて運用することも可能にした。設置場所の条件などに合わせ、任意の形へ対応できる。

またＪＤＩは、可視光を透過する透明な反射板も開発している。窓ガラスや広告媒体などにも設置が可能になり、設置の自由度が高まる。

鳥取工場では２０２５年３月までに液晶パネルの生産を終了するが、終了後は石川工場（石川県川北町）や茂原工場（千葉県茂原市）で生産を引き継ぐ見通しだ。