ブリヂストン、住友ゴム…タイヤ大手は全社増収、原材料高騰の影響は?
タイヤ大手4社が高付加価値商品拡販や価格戦略を推し進め、収益力を強化している。2023年1―6月期連結決算は、海外の景気減退などの影響が大きかったものの、全社が増収、2社が当期増益となった。住友ゴム工業とトーヨータイヤは為替の円安効果や各種コスト影響の緩和もあり、23年12月期の売上高と各利益段階の予想を上方修正した。各社は事業環境リスクをカバーするため、プレミアム戦略に引き続き注力する。
高止まりしていた原材料価格は一服感が出てきた。また海上輸送費も低下傾向。住友ゴムは23年12月期連結業績予想(国際会計基準)の売上高を従来予想比100億円増の1兆1700億円、当期利益を同20億円増の230億円に上方修正した。
トーヨータイヤは売上高を同200億円増の5600億円、当期利益を同260億円増の550億円に上方修正。当期利益は前期比39・5%減の従来見通しから一転し、過去最高益を予想した。海上輸送費などの下落に加え、米国のピックアップトラック向けタイヤなどの販売好調が寄与する。
住友ゴムは中国市場でタイヤの需要が低迷しており、回復が鈍化している感触。一方、22年に発売した電気自動車(EV)専用タイヤは「中華系メーカーから引き合いがあり、さらに車種やサイズを拡大する」(山本悟社長)と前向きな動きも出ている。
ブリヂストンもグローバルで景気減速の影響を受けた。特に北米や欧州の市販用タイヤ販売について石橋秀一グローバル最高経営責任者(CEO)は「想定以上に厳しい」とみる。ただ通期見通しは変更せず「ビジネスの質向上に注力する」(同)と強調した。
各社は、これまでも実施してきた高付加価値製品の訴求を継続し利益を確保する。ブリヂストンは高インチタイヤなどプレミアム製品の拡販や売価の改善、低採算領域の見直しを加速する。
住友ゴムは一時的に赤字となっていた北米事業を「稼ぐ体質」に変革する。「ファルケン」ブランドのスポーツ多目的車(SUV)用タイヤ「ワイルドピーク」シリーズを年間で前年比20%増販する計画。併せて低採算品や最小在庫管理単位(SKU)の削減にも注力し、23年は黒字化を見込む。
横浜ゴムはSUVやピックアップトラック向けのブランド「ジオランダー」の拡販を本格化し、23年度の販売本数で19年度比15%増を目標に掲げる。また高級車向けブランド「アドバン」は同75%増を目指す。