中国路線復活相次ぐ…黒字化へ中部空港で高まる期待と残る課題
中部地域と世界を結ぶ玄関口の中部国際空港(愛知県常滑市)で、かつての主力路線だった中国路線の復活が相次いでいる。4月に中国・天津市と結ぶ直行便が復活したことを皮切りに、上海市や北京市、香港など各地と結ぶ路線の再開や新規就航が目立つ。8月10日には中国政府が日本への団体旅行を解禁。コロナ禍前のにぎわいが戻ってきそうな一方で、空港で働く人材不足の解消という課題が迫っている。(名古屋・永原尚大)
「中部日本の名古屋へようこそ」―。4月。横断幕を手にした空港職員は、3年2カ月ぶりに再開した中国・天津市からの直行便の乗客を出迎えた。
同路線を含め、4月から中国各都市や香港などを結ぶ路線が再開・新規就航。国際旅客便の週当たりの運行便数は100の大台を超えた。ただ、7月時点で週当たりの便数は過去最高だった2020年1月の482便の3割にとどまっている。
中部国際空港の犬塚力社長は5月に開いた決算会見の場で「中国路線の再開が(中部国際空港)復活のカギだ」と強調した。コロナ禍前は、同空港の出入国者の4割を中国籍が占めていたためだ。同社は23年度の連結業績予想で34億円の営業赤字を見込んでいるが、「中国路線を中心に需要を取り込むことができれば(年度内の)黒字化も見える」(犬塚社長)という。
8月10日。中国政府は中国人による日本への団体旅行を解禁。愛知県の大村秀章知事は「中国からのインバウンド(訪日外国人)は多かった。中部国際空港での(中国路線の)復便と観光客の増加を期待したい」と語った。中部地域の自治体からも中国路線への期待が高まっている。
ただ課題もある。「ネックはグランドハンドリングの人手不足だ」。犬塚社長はこう語る。離陸する航空機を誘導したり、貨物を搭載したりする仕事だ。中部国際空港がある空港島内で働く従業員は21年時点で約8500人。最多だった17年の約1万人の85%に減った。中部運輸局の金子正志局長は「すぐに戻せるかというと難しい。雇用条件も含めて『労働する環境として良い』と提示することが必要だ」と指摘する。中部空港は25年度までの3カ年の中期経営計画に「人手不足の解消」を盛り込み、合同採用説明会などを通じて人材確保に取り組む構えを見せる。
同空港では、25年度の旅客数をコロナ禍前の19年度と同じ水準の1260万人を目標としている。人手不足を解消し、再開する中国路線を受け入れていく流れを生み出せるかが注目だ。