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NTNが新技術、転がり軸受の余寿命をAIで高精度予測

NTNが新技術、転がり軸受の余寿命をAIで高精度予測

転がり軸受を余寿命が尽きる前まで使えるようになる

NTN大阪大学産業科学研究所の福井健一准教授らと協力し、転がり軸受の余寿命を人工知能(AI)で高精度に予測する技術を開発した。AIを複数組み合わせ、転がり軸受の損傷と余寿命の関係を解析し、従来技術比で30%予測精度を高めた。軸受は寿命後も稼働を続けると周辺装置が損傷し、生産性が低下する。予測技術の実用化を図り、顧客に軸受交換の適切な時点を示し、保守サービスの競争力を強める。

開発したのはAIの深層学習(ディープラーニング)とベイズ学習による予測技術。AIで転がり軸受の余寿命を予測する従来技術は、他の軸受メーカーや大学も手がけている。これに対しNTNは転がり軸受の損傷と余寿命の関係に着目し、複数のAIも組み合わせ予測精度を高めた。

軸受は軸受軌道面に剥離などの損傷が生じた時が寿命とされる。ただ交換のタイミングが難しく、使い続けて周辺装置も損傷する恐れがある。そこで剥離やそれによる振動で周辺装置が損傷し使用限界に至る時間を予測できるよう、運転時間と振動や剥離の程度を測定し関係を調べた。

さらに画像処理用の深層学習で、運転時間と振動の変化を画像データに変換し、損傷と使用限界時間の相関を示す余寿命予測曲線を完成した。加えて測定データはバラつきや軸受の個体差があるため、これらを考慮し予測の信頼性も評価できるベイズ学習を組み合わせた。測定データも増やした結果、余寿命予測精度は同社調べで従来比30%向上した。

余寿命を高精度に予測できれば、余寿命が尽きる前に軸受を交換し、周辺装置を損傷せずに済む。

例えば取り出しにくいポンプやファンの軸受をすぐに取り換えず、余寿命が尽きる前まで使える。時期は未定だが保守サービスで実用化する考え。NTNは2017年から阪大と共同研究し、福井准教授らから先進的なAI知見を採り入れている。


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日刊工業新聞 2023年08月17日

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