ジェイテクト・日本精工・NTN…軸受3社の通期予想、上昇基調に転換
軸受メーカー3社の2024年3月期は半導体不足の緩和などで自動車向けを中心に堅調に推移し、各利益段階を含め増収増益の見通しとなった。原材料高騰などの価格転嫁が進展するほか、物流費の低下も寄与する。不透明感は残るもののコロナ禍やウクライナ危機直後の苦境を脱し、安定した上昇基調へ転換をうかがう。
NTNは24年3月期に売上高が初の8000億円台に達する見通し。鵜飼英一社長は、「世界経済は厳しいが緩やかな回復が期待される」と成長を見据える。受注を伸ばし、価格転嫁も進める。人件費が増え、為替の円安効果も縮小するが受注増や売価と物流費の改善などで、営業利益も300億円台へ復調を見込む。
23年3月期は日本で営業利益を伸ばしたが、米欧で営業損益の赤字が前期から継続した。円安効果が薄れ、課題の利益率を改善できるかどうか経営の再生が問われる。鵜飼社長は「強みとなる等速ジョイント(CVJ)やハブベアリングで電気自動車(EV)向けの競争力を持続する」と攻めの姿勢も示す。
日本精工は24年3月期に売上高9900億円を見込む。市井明俊社長は「工作機械や半導体製造装置が後半にかけて緩やかに回復するシナリオ」を想定する。高止まりを見込む鋼材やエネルギー価格は売価転嫁を進め、賃金上昇も原価低減と売価転嫁で相殺する考えだ。24年3月期の自動車事業の売上高は5800億円(前期比11・4%増)を計画。同事業の利益は前期から165億円改善し黒字転換を見通す。
23年3月期は売価転嫁や費用抑制などで23年2月の公表予想より上振れた。市井社長は「継続して株主資本利益率(ROE)10%と企業価値向上にこだわりたい」と意気込む。
ジェイテクトの「産機・軸受」事業は中国を除く全地域で販売が伸び、23年3月期の売上高は前期比12・8%増の3515億円となった。事業利益も同4・0%増の170億円と増えた。「新型コロナの影響緩和などで販売が増加した。為替の影響もプラスに働いた」(佐藤和弘社長)。原料価格などの高騰の影響は依然として大きいものの、円安や原価低減が効いた。
24年3月期は自動車部品、工作機械を含めた全事業の営業利益で前期比2割増を予想するが、佐藤社長は「正直堅めに予想している」と明かす。
日本精工が23年3月期に自動車事業の営業損益が前期から赤字続きとなるなど、経済情勢の改善は楽観できない。軸受各社は特に海外で原料・物流高騰の打撃が大きかった。今の売価は多くが情勢悪化の拡大前に決められたため、利益に狂いが生じ修正に時間を要している。危機を乗り越え世界で勝ち上がるには、円滑に売価転嫁できる技術力やブランド力の向上、EV化も踏まえた次代の製品戦略が求められる。
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