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ブイログカメラ競争激化、ソニー・富士フイルム・キヤノンは技術の優位性をどう訴求するか

ブイログカメラ競争激化、ソニー・富士フイルム・キヤノンは技術の優位性をどう訴求するか

ヨドバシカメラ新宿西口本店ではブイログに特化したブースを展開する

カメラメーカー各社が日常を動画に記録するビデオブログ(ブイログ)市場でしのぎを削る。各社は製品に、集音や色味といったブイログの撮影に必要な機能を搭載。「ユーチューバー」などの動画投稿者やブイログに挑戦したい顧客の要望に応える。5月に新型コロナウイルス感染症が感染症法上の「5類」に分類され、消費者の外出機会が増える中、カメラ市場も盛り上がりをみせる。この好機を捉えられるかが試される。(阿部未沙子)

ヨドバシカメラ(東京都新宿区)の新宿西口本店(同)では、ブイログ用カメラを紹介するブースを2023年から本格的に展開している。カメラ専門チームの霜山浩伸氏は「動画撮影への要望は非常に増えている」と話す。画面に触れて操作できるといった使いやすさのほか、色味の多様さや集音性能のよさ、被写体の背景をぼかした表現を求める顧客が多いようだ。

さらに霜山氏は「若い世代や海外からの顧客が戻ってきた」と実感。カメラ全般の販売も「21年から伸びている」といい、けん引役は初心者でも使える入門機だという。

実際、カメラ市場は回復してきた。カメラ映像機器工業会(CIPA)の調査によると、1―6月のデジタルカメラの出荷額は前年同期比12・6%増の約3137億円。ミラーレスカメラは出荷額のほか数量も順調に伸びている。

新型コロナの5類への移行を背景とした消費者の外出機会の増加は、カメラ市場にとっては追い風だ。メーカー各社は、初心者でも扱いやすい機種を相次いで投入。CIPA担当者はブイログ用カメラについて「間口を広げる入門機になりそうだ」と期待する。

静止画の撮影を従来の役割とするカメラにとって、ブイログのような動画撮影機能の搭載は他社との差別化につながる。ただ、こうした潮流が「カメラ各社の戦略の立て方を難しくしているのでは」(CIPA担当者)という見方もある。限られた経営資源を静止画、動画にどう振り分けるかは各社の課題となる。

ブイログ用カメラは、カメラユーザーのすそ野を広げる入門機と言える。中高級機種に注力するニコンも「Z30」のようなブイログでも使えるカメラを発売するほどで、カメラ各社の期待がうかがえる。

Z30はスマートフォンよりも優れた映像を撮影したい顧客からの要望を受け開発。一般的なスマホと比べて面積が約14倍大きいイメージセンサーを搭載し、暗所でも画質の高い撮影ができる点などを訴求する。

ソニーは2020年以来、ブイログに特化したカメラを展開してきた。右端が23年6月発売の最新機種「ZV-1Ⅱ」

ニコン以外のカメラメーカーもブイログ撮影に必要な基本性能を搭載しつつ、各社の持ち味を生かす。録音機能に特にこだわるのが、パナソニックとソニーだ。パナソニックのミラーレス「ルミックス G100」には顔認識と連動し、自動で集音範囲を調整する機能を搭載した。

ソニーはブイログに特化した「ブイログカムシリーズ」を20年から発売してきた。23年6月には「ブイログカム ZV―1Ⅱ」を初号機の後継機という位置付けで投入した。人物の顔や物を認識し、内蔵マイクの指向性を自動で切り替えられる「インテリジェント3カプセルマイク」を搭載。「ソニーのデジタルビデオカメラ『ハンディカム』でのマイク技術が生きた」とソニーマーケティング(東京都港区)の渡辺昭仁氏は振り返る。

一方、写真フィルムが祖業の富士フイルムは、色味の豊かさを強みとする。6月に発売したミラーレスカメラ「FUJIFILM X―S20」では、19種類の色表現モードを備えた。鮮やかさを強調して表現したり、映画用フィルムを再現したりできる。

開発過程では「撮影後の色の調整に時間がかかることが分かった」(プロフェッショナルイメージンググループの五十嵐裕次郎統括マネージャー)。そこで多彩な色を再現する「フィルムシミュレーション」機能を引き続き搭載した。

また、新たに「ブイログモード」を搭載。同モードには背景をぼかす表現や手ブレ防止など基本性能を集約した。「カジュアルな映像表現をする人が増える中で、いかに簡単に撮影してもらえるか」(五十嵐氏)が課題だと認識し、操作性の向上につなげた。

キヤノンの「V10」(左)と3Dプリンターで造形した初期段階の試作品

他方、独自路線を貫くのがキヤノンだ。6月にブイログ用縦型カメラの「パワーショット V10」を発売。イメージコミュニケーション事業本部の商品企画担当の大辻聡史氏は「ブイログ以外の用途や若い世代以外の方々にも手に取ってもらえている」と手応えを語る。スマホは競合ではなく、共存する相手とみなしている。

こだわったのは、持ち運びや使いやすさ。手のひらに収まる大きさを目指してV10を開発し、幅約63・4ミリ×奥行き34・3ミリ×高さ90ミリメートルで約211グラムに抑えた。イメージコミュニケーション事業本部の開発担当の吉田貴志氏は「可動式の液晶モニターやスタンドなど必要最小限の機能に絞った」と話す。

カメラを縦型にしたことで三脚を装着しなくても安定した動画撮影が可能となり、持ち運ぶ機材が減る。また、正面にあるボタンの形状や位置も操作性の向上に一役買った。総合デザインセンターのデザイン担当の稲積めぐみ氏は「ボタンのサイズや形の検証を繰り返した」と振り返る。

大辻氏はV10に関して「スマホと一緒に使って頂きたい」と狙いを語る。今後、パワーショットVシリーズでは、仮想現実(VR)の撮影ができるカメラを展開する計画だ。

国内カメラ各社のブイログ市場への参入が相次ぐ中、米ゴープロが展開する小型ビデオカメラも市場を席巻する。オートフォーカス(AF)や画質のよさなどカメラ各社が培ってきた技術面での優位性をいかに顧客に訴求できるかが問われる。


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日刊工業新聞 2023年08月16日

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