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大陽日酸が半導体製造向け希ガス「ネオン」を国産化する背景事情

26年めど
大陽日酸が半導体製造向け希ガス「ネオン」を国産化する背景事情

製鉄所に産業ガスを供給する空気分離装置(イメージ)

大陽日酸は2026年をめどに、半導体の製造工程で使う希ガス(レアガス)「ネオン(Ne)」を国産化する。千葉県君津市に希ガス生産設備を設置し、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)とネオンを生産する。ネオンはエキシマレーザーなどに使われるが、内需のほぼ全量を輸入に頼り、主要生産国はウクライナやロシアなどで調達リスクが懸念される。ネオンの国産化と半導体製造に不可欠な希ガスを増産し、サプライチェーン(供給網)強靱化に貢献する。

希ガスは製鉄所などに酸素や窒素を供給する空気分離装置(ASU)の副産物。日本製鉄系の君津サンソセンター(千葉県君津市)が新設するASUに希ガス生産設備を設ける。ネオンの生産能力は年産2700万リットルを計画。投資額は希ガス生産設備だけで数十億円規模になる見込み。一部に経済安全保障推進法に基づく国の助成を活用する。

ネオンは他の希ガスと併産され、先行してクリプトン、キセノンを25年から生産する。計画通りネオンの生産が開始されれば、国内で前例のない量産規模となる。クリプトンは年産能力200万リットル、キセノンは同25万リットルを見込む。

ネオンはエキシマレーザー発振用の混合ガスの主成分で、主に半導体リソグラフィー工程で使用される。フッ化アルゴン(ArF)などEUVよりも旧世代の光源に多く使われており、自動車や産業機器など幅広い製品に搭載される半導体の製造に用いることから、中長期的な需要拡大が見込まれる。

半導体の内製化が進み希ガスの需要増が見込まれる一方、供給能力は追いついておらず、安定確保が求められている。大陽日酸は九州サンソセンター大分工場(大分市)などでクリプトン、キセノンを生産しているが、大半を輸入に頼る。希ガスの輸出国は中国やロシア、ウクライナなどで経済安全保障や半導体供給網への備えから、政府は国内供給網の整備を後押ししている。

大陽日酸は24年にJFEサンソセンター福山工場(広島県福山市)でも希ガス(クリプトン、キセノン)を生産する予定。君津と合わせるとクリプトン、キセノンの国内生産能力は現状比で約3倍になると見込む。


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日刊工業新聞 2023年08月04日

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