日本5割・欧米7割超…国内企業でデータ利活用が遅れている原因
国内企業によるパーソナルデータの利活用が遅れている。総務省がまとめた2023年版の「情報通信白書」によると、同データを活用する企業の割合は米国、ドイツ、中国が7割以上だったのに対し、日本は52・8%だった。国内のデータ利活用は教育や医療で加速しているが、セキュリティーなど課題は多い。生成人工知能(AI)をはじめとする新たな潮流も生まれる中、日本は他国から取り残されることなく波に乗れるか。(張谷京子)
総務省は日本、米国、ドイツ、中国の4カ国の企業や消費者を対象にデータの提供・活用の意識について調査を実施。その結果を23年版の情報通信白書で紹介している。同白書によると、顧客の基本情報などのパーソナルデータを「活用できている」企業の割合は、米国が81・9%、ドイツは77・0%、中国は92・6%。これに対し日本は52・8%で、諸外国の企業と比べて低かった。
原因は何か―。データの取り扱いや利活用における課題や障壁を尋ねたところ、日本では「データの利活用方法の欠如、費用対効果が不明瞭」と「データを取り扱う人材の不足」を挙げる企業が多かった。一方で、他の対象国の企業では「データの取り扱いに伴うレピュテーション(評判)リスク」「データの所有権の帰属が自社ではないまたは不明な場合があること」が多く挙げられた。
また、日本は他国と比べて、消費者が企業へパーソナルデータを提供する機運が低い。4カ国の消費者に対し、サービスの利用のために企業へパーソナルデータを提供する意向を尋ねたところ、日本では「提供する」と回答した割合が58・7%。諸外国に比べ約15%低かった。パーソナルデータを企業に提供したくないという消費者の抵抗感が、企業のデータ利活用を阻んでいる可能性もありそうだ。
ただ、日本でも着実にデータ利活用の取り組みは進んでいる。例えば教育分野では、民間の学習塾や予備校で、蓄積したデータをAIで分析し、一人ひとりに個別最適化した学びを提供する取り組みが進む。また医療分野では、個別に保存・管理されている医療関連情報を一つのプラットフォーム(基盤)に集約して保存・管理する「全国医療情報プラットフォーム」構想が検討されている。
データ流通量が増大する中、今後懸念されるのはサイバー攻撃のリスクだ。情報通信白書は「情報通信インフラに使用される通信機器やシステムにあらかじめ不正なソフトウエアが仕込まれていたり、保守・運用に関するサプライチェーン(供給網)を介して不正なソフトが混入されたりする」といったリスクが顕在化していると警鐘を鳴らす。
生成AIの急速な広がりをはじめ、情報通信技術(ICT)の変化は速い。そうした中、日本企業・団体はサイバー攻撃などのリスクを最小化して、データ利活用を加速できるかが問われている。