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夏休みに注目、無料で“魅せる”企業文化施設

夏休みに注目、無料で“魅せる”企業文化施設

「TOTOギャラリー・間」ウェブサイトより

新型コロナウイルス感染症が落ち着き、控えていた美術館や博物館の観覧に心は向かう。しかし近年は観覧料も高額で、内容が不確実な企画に足が向きにくい。そんな中で無料の企業文化施設の企画だと、「中身はよく分からないが行ってみよう」という気になるものだ。

東京都港区にある建築専門の「TOTOギャラリー・間(ま)」もその一つ。現在は「ドットアーキテクツ」という設計・プロジェクト集団の展示が行われている。定番の建築模型の展示だけでなく、同集団の大阪の拠点で展開する工房やミニラジオ局、バーなども再現。雑然とした中から何かが生まれる雰囲気を感じさせる。

余暇も“設計してつくって使う”コンセプトで、ビル内中庭にパターゴルフ場を構築。子どもを含む来訪者が段ボールで独自のパターを製作、プレーするイベントを実施した。

各展覧会の建築家にとって、風雨への配慮が必要な中庭の活用も腕の見せどころ。「どう活用しようかと悩む、それは建築家にとっても楽しい時間だ」と橋田光明館長は説明する。それは来館者が「これは何を意味するのか?」と楽しみながら悩む時間と重なる。

いいな、と思うのは大学や高等専門学校、工業高校など学生・生徒の来館が多い点だ。バスツアーで繰り出す集団もあるし、就職活動や学会参加で上京した個人もいる。地下鉄千代田線の乃木坂駅すぐなのは、北九州市のTOTOミュージアムとは違う強みだ。

建築学部などのゼミの場として、企画のたびに利用する教員もいるとか。無料でないとこうはいかない。ギャラリー愛称“ギャラマ”を記憶にとどめ、次の時代の建築をリードする、若い世代の育成を応援したい。

日刊工業新聞 2023年07月17日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
企業文化施設だけでなく、大学付属博物館なども興味深いものが多い。企業人はライバル社の施設に行きにくいかもしれないが、大学関係はそうはならないだろう。また大学人が他大学へ出向く機会も、学会開催や共同研究など限られ意外に、「他大学のキャンパスに足を踏み入れることは少ない」という。夏休みを迎えて、子連れで出向くのも楽しい。訪問範囲を広げ、新たな発見をしてはいかがだろうか

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