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「鉄道美術」の傑作がそろう、東京駅の中の美術館の強み

「鉄道美術」の傑作がそろう、東京駅の中の美術館の強み

歌川広重(三代)「横浜海岸鉄道蒸気車図」(1874年 神奈川県立歴史博物館蔵)2023年1月9日まで開催中の「鉄道と美術の150年」より※展示替えあり

1872年(明治5)、新橋―横浜間で開業した日本の鉄道は、14日(鉄道の日)に150年を迎えた。偶然にも「美術」という言葉が初めて使われたのも同年とされる。絵師は錦絵に汽車や駅を描き、やがて洋画家や日本画家たちも鉄道をモチーフにして描くようになった。彼らはまた鉄道で旅をし、旅先でキャンバスを広げた。

東京の玄関口、「東京駅」の丸の内駅舎内にある東京ステーションギャラリーでは現在、企画展「鉄道と美術の150年」が開かれている。歌川広重(三代)の代表作「横浜海岸鉄道蒸気車図」から、日比野克彦氏がデザインした電車のヘッドマークに至るまで、全国約40カ所から集めた「鉄道美術」の傑作約150件が一堂にそろう。

1987年の国鉄民営化の翌年、JR東日本は「駅を単なる通過点ではなく、香り高い文化の場にしたい」と考え、東京ステーションギャラリーを開館。92年に東日本鉄道文化財団が設立されると、JR東日本のメセナ活動として同財団がギャラリーや鉄道博物館などの運営を担う。丸の内駅舎の復原工事による6年半の休館を経て2012年10月14日に現在の場所で再開館し、今年はちょうど10年に当たる。

コレクションは国鉄時代に自然と集まった鉄道にまつわる作品群などのほか、今も「資料的価値の高い作品を中心に収集している」(冨田章館長)。開催中の企画展もそうだが、鉄道史や美術史としてはもちろん、政治や社会、戦争、風俗など多角的な視点から読み解けるのも鉄道という大事業の面白さだろう。

3月に閉幕した「ハリー・ポッターと魔法の歴史」展は近年では最多の動員数を記録。一方で、冨田館長は「地方の知られざる作家を取り上げ、東京で広めたい」という。アクセス抜群で東京の中心にある小さな美術館だからこそ、個性的な展覧会を開けることが強みになっている。

レンガ壁の展示室を特徴とする国内唯一の駅舎内にある美術館
【メモ】▽開館時間=(通常)10―18時(金曜日は20時まで)▽休館日=月曜日など▽入館料=展覧会により異なる▽最寄り駅=JR中央線ほか「東京駅」▽住所=東京都千代田区丸の内1の9の1(東京駅丸の内北口改札前)▽電話番号=03・3212・2485
日刊工業新聞2022年10月24日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
東京ステーションギャラリーは言わずと知れた「東京駅の中の美術館」。辰野金吾の設計によって1914(大正3)年に創建され、重要文化財でもある東京駅丸の内駅舎の中にある。東京駅らしいレンガ壁の展示室が特徴だ。京都駅にも美術館「えき」KYOTOがあるが、駅舎内にあるのは日本の「中央駅」のみ。駅の機能を阻害しかねないため、大規模な展覧会は開けないそうだが、訪れるのが美術ファンだけではあまりに惜しい。早速、「鉄道と美術の150年」展を観に行こう。

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