トリチウム除去で新手法、放射能汚染水を電気分解
東京理科大学の安藤静敏教授らは、放射能汚染水からトリチウムを除去する手法を開発した。汚染水に炭化物粉末とシリカ鉱石粉末を添加して撹拌した後、水を電気分解する。トリチウムの減衰率が約9・02%となり比較的高い分離効率であることが分かった。新たな放射線物質の分離技術として応用が期待される。
東京都立産業技術研究センターとの共同研究。成果は、国際科学誌ヘリヨンに掲載された。企業と共同研究を進め、社会実装を目指す。
トリチウム疑似汚染水50リットルに対し、吸着剤としてもみ殻や花などを燃やして作った炭化物粉末とシリカ鉱石粉末を加えて撹拌・循環した。撹拌装置には未粉末の1センチ―2センチメートルのシリカ鉱石を充填したドラムも設置し、回転させながら循環させた。その後、陰極にステンレス、陽極にアルミニウムを使って処理水を電気分解した。水中のトリチウム分子は解離してトリチウムイオンやトリチウム―水酸化物イオンになり、撹拌・循環で添加物が吸着したとみられる。トリチウムが吸着した添加物は電解処理で電極に堆積し、回収できた。
一連の工程を2回繰り返した処理水を調べるとトリチウムの減衰率が従来よりも比較的高く、再現性も高いことが分かった。
放射性物質を含む汚染水の処理はさまざまな方法が開発されている。だがトリチウムは他の放射性物質に比べて除去が困難であり、安全に高効率で処理する方法の開発が求められていた。
日刊工業新聞 2023年月7月25日