特異な仕組みで研究者養成してきた総研大、学長が描く青写真
四つの大学共同利用機関法人と一体で、大学院博士課程教育を行う総合研究大学院大学。知る人ぞ知る存在だったが変革の時を迎えている。最先端の研究設備を持つ大学共同利用機関を「場」とする、他大学や企業との新たな連携の青写真を永田敬学長に聞いた。
―特異な仕組みで長年、大学や研究機関の研究者養成をミッションとしてきました。
「自然科学研究機構などの大学共同利用機関法人は国立天文台、国立情報学研究所など20弱の研究機関を抱える。研究指導を受ける大学院課程を整備するのが総研大だ。今春、専門分野間の壁を低くするため、それまでの6研究科を『先端学術院』にまとめた。計5法人のタッグを、どのように日本全体の研究力強化につなげるかが、次の課題だ」
―大学共同利用機関はアルマ望遠鏡や大強度陽子加速器施設「J―PARC」などの研究資源について、共同研究・共同利用を進める立場です。
「国公私立大学の学生を含めた研究者が全国から集まるが、つながりは研究に限定されていた。しかしここに本学が加わり、正式な大学連携にしたらどうだろう。単位互換や博士学生の研究指導などで、各大学の教育も支えていける」
「国が進める『地域中核・特色ある研究大学』の施策により、対象の大学は重点分野に集中することになる。それ以外の分野では、これまで以上に我々を活用してほしい」
―情報・統計や、高エネルギーや宇宙の装置開発で、企業人への博士号授与も多いと聞きました。
「社会人学生は単独で各研究機関や総研大と関わっているのが現状だ。しかし今はデータサイエンス人材などの活用に企業が積極的なだけに、本学の若い学生も交えた産学連携教育を考えたい」
―基礎・学術研究に特化した大学だと思っていたので意外です。
「もちろん重視しているが、限定していては若い人を引きつけられず、基礎・学術研究のレベル低下にもつながる。さまざまな可能性のある時代だけに工夫をしたい」
【略歴】ながた・たかし 82年(昭57)東大院理学系研究科博士課程修了、同年同大助手。98年教授。13年副学長。17年総研大理事・副学長。大阪府出身、69歳。