技術移転機関以外で初…東北大と三井住友信託銀が設立した共同出資会社の全容
東北大学と三井住友信託銀行は共同出資会社「東北大学共創イニシアティブ」(THCI、仙台市青葉区)を設立し、新たな産学・社会連携ビジネスをスタートした。東北大の青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)内で整備が進む次世代放射光施設「ナノテラス」を利用する中小企業の計測分析を支援したり、同大の最先端技術をサービス業の新事業創出につなげたりする。国立大学と民間企業の共同出資会社は技術移転機関(TLO)以外では初とあって、注目されそうだ。(編集委員・山本佳世子)
国立大の出資会社はベンチャーキャピタル(VC)など複数の形態がある。THCIの出資金は1億円。東北大が85・1%を出資する。THCIの計測分析コーディネートは大学の研究成果の実用化に向けた研究企画や、教育研究施設の管理・外部組織の利用促進を手がけられる点を特徴とする。
活動計画は主に二つ。一つは放射光などによる高度計測分析の支援だ。一般の受託分析サービスは、素材のメーカーやユーザーの子会社が親会社向け事業の延長として、小規模に行うことが多い。用途や耐久性・安全性などの項目によって、計測の理論も手法も違う。そのため新規事業に業界や業態を越えて乗り出すのは難しい。
同社は中小企業などの顧客に対し、計測の科学的知見を持つ大学研究室と、受託分析や実験受託、データ解析などの会社をつなぐ。企業の研究費助成などに関し、自治体や経済団体とも連携する。
もう一つは新たな価値・体験と結びつくモノ・サービスの事業開発支援だ。例えば眼の領域なら、関連する産業は医療・製薬や保険に加え、ユーザー支援の観点からゲームや情報機器への広がりが想定される。優れたプレーにつなげるスポーツ業界や手軽に検査ができる店舗などの社会実装が考えられる。
東北大から参画する、THCIの石川健社長は「企業だけでなく個人が兼業や副業で各種プロジェクトに参加する仕組みも後押ししたい」と語る。三井住友信託銀行から参画する日高大樹取締役は「新事業に最適な相手として我々が知る他の投資会社、VC、信用金庫など多様なプレーヤーをつなげたい」と強調している。