新しいAIモデルのライフサイクル管理基盤「エラーフィックスAI」って何だ?
ここ数年、AIモデル(機械学習モデル)を運用しながらも継続的に改良することで予測精度を維持する「MLOps(Machine Learning Operations)」が注目されている。機械学習(Machine Learning)と、運用(Operations)を掛け合わせた概念であり、AIモデルのライフサイクル管理を通じて劣化したAIモデルを検知し、再学習することで予測精度を維持する。最近では、MLOpsを支援するプラットフォームとして、「MLflow」に代表されるオープンソースのフレームワークが公開されている。ただし、MLflowなどをそのまま生産システムに組み込むと、そのバージョアンアップの影響を受けるといった課題がある。このような状況に一石を投じたのが「エラーフィックスAI」というアプローチである。
エラーフィックスAIは、AIを実装した各種生産システムの運用全体のライフサイクルを管理するのが特徴。生産システムの稼働時に発生するログ情報を収集して独自のデータ基盤に保存する。このデータ基盤は産業システムから分離されおり、エラーフィックスAIのバージョアンアップなどの影響を受けない。ゆえに、既存フレームワークが抱えるような課題がない。
また、このデータ基盤で蓄積したエラー情報は、学習データとしてAIモデルの精度の向上に加え、生産システムの稼働状況や故障予測などの分析にも役立てられる。
このようなユニークなアプローチをとるのは、製造現場においては生産システム全体の運用効率が重視されるから。AIモデルの精度の維持は、外観検査など特定工程では重要ではあるが、その効果は限定的なものであり、収集したデータを生産システム全体に活用する仕組みが求められる。一方、予測分析などを多用するビジネスでは、AIモデルの精度がそのまま事業競争力に直結する。ゆえに、MLOpsのようにAIモデルそのもののライフサイクル管理が好まれるが、生産システムへの適用には馴染まない。
エラーフィックスAIは、5Gネットワークを使用した工場デジタル化で適用されつつある。ここでは、AIでの画像認識により作業者の動線を計測し、仮想空間上で再現。製造現場の効率化や健康管理の支援を目的とした取り組みとなっており、画像認識の精度の改善などでエラーフィックスAIを役立てている。そのほかAIモデル実装のセンサデータを収集するシステムとして製造業や自治体などで運用実績がある。
日刊工業新聞社では7月21日(金)に、「産業機器におけるAIモデルのライフサイクル管理とデータ活用の実践方法」セミナーとして、その具体的な運用方法を解説する。各種生産システムの開発担当や、これらを使用する製造事業者、データサイエンティストにはお薦めの内容となっている。
セミナー情報
7/21(金)開催!
産業機器におけるAIモデルのライフサイクル管理とデータ活用の実践方法
詳細はこちら→https://corp.nikkan.co.jp/seminars/view/6602
【開催プログラム】
1.はじめに:産業機器とAIの組み合わせの意義と課題
1-1 産業機器とAIがもたらすDXへの貢献
1-2 AIモデルを使用する際の注意点と課題
1-3 現場の産業機器とAIモデルを連携させるためのポイント
1-4 データサイエンティストの必要性と役割
2.事例紹介:産業機器とAIを活用した製造業の事例
2-1 3DCADで時短学習する産業用ロボット
2-2 侵入検知・事故防止
2-3 薬錠剤の外観検査
2-4 ワクチン液体の異物検知
2-5 製造条件のスコアリングで検査を効率化
3.解説:MLOpsと産業機器の運用のためのAIモデルライフサイクル管理
3-1 MLOpsの基本的な概念と考え方
3-2 MLOpsのフレームワーク紹介
3-3 AIモデルのライフサイクル管理と、AIを組み込んだ産業機器の運用の考え方
3-4 産業機器の運用を前提としたAIのライフサイクル管理システム事例:エラーフィックスAI(機械学習のライフサイクル管理ではなく、運用ライフサイクル管理)
4.実践:AIモデルの再学習とデータ活用のコツ
4-1 精度向上だけに使うのはもったいない!収集した再学習データの活用とは
4-2 運用ログ・データから生成するデータ基盤の構築方法
4-3 運用ログ・データの遠隔管理・可視化・保守活用の方法
4-4 AIモデルの再学習機能の実装と利用方法
4-5 現場データを使用したAI学習コストの低減方法
4-6 AI・センサデータを収集しデータ基盤を生成するシステム:エーアイ・スターター
5.まとめ:産業機器とAIで製造業を変革する!
5-1 セミナーの要約と復習、理解の確認
5-2 産業機器とAIの組み合わせで事業の選択肢(DX)を生み出す方法
5-3 製造業のデータ活用のサービス化事例
5-4 質疑応答