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トヨタが水素の製造から利用まで技術を手の内化する意義

トヨタが水素の製造から利用まで技術を手の内化する意義

トヨタ自動車は本社工場に設置した「水素発電パーク」で、水素利活用の実証を進めている

トヨタ自動車は量産工程での水素利用を拡大する。2024年度中にも燃料電池(FC)生産工程で発生した廃水素を回収して発電に再利用する実証ラインを構築し、稼働を始める。また電気自動車(EV)「bZ4X」に車載電池を組み付ける工程で水素の活用を始めた。トヨタは水素を脱炭素社会の有力なエネルギー源に位置付ける。水素の製造から利用まで自社で技術を手の内に入れ、将来の商用展開につなげる。

燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」のFCスタックを製造する本社工場(愛知県豊田市)に廃水素活用ラインを置く。同工場では水素循環の実証施設「水素発電パーク」を新設し、22年から評価を始めた。

2基の液体水素タンクや都市ガスと水素の混焼ガスエンジン発電機などで構成。30年以降の商用化を見据えて水素の利活用技術を検証しており、その一環として実証ラインを設ける計画だ。

タンクの水素はFCスタック量産工程での発電テストなどに使っている。ただテストに使われなかった水素と、外気による温度上昇に伴う蒸発水素と合わせて、これまで供給水素のうち約20%を廃棄していた。

蒸発水素はすでに回収して混焼発電に利用する仕組みを構築しており、テストでの未利用分の水素についても、回収システムを整備する。エネルギーを余すことなく使い切ることで燃料費の削減技術や、より効果的な二酸化炭素(CO2)排出量削減技術の確立につなげる。

またbZ4Xを製造する元町工場(愛知県豊田市)では、車載電池を車両の床下に組み付けて封止する際の乾燥炉に、水素ガスバーナーを導入。水素と都市ガスの混焼燃料を採用した。

水素発電パークでは、このほかにもミライのFCスタックを使った定置式発電機を第2世代品に切り替えて23年から実証を始めた。現状、商用レベルと比べて4―5倍の機器コストを、耐久性の向上やFCの量産効果などで低減することを目指す。


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日刊工業新聞 2023年06月26日

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