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指先感覚“見える化”、近畿大学がセンサー配置の最適条件を突き止めた!

指先感覚“見える化”、近畿大学がセンサー配置の最適条件を突き止めた!

指先の感覚を計測し見える化するシステム

近畿大学の池田篤俊准教授らは、指先にかかる力など指先の感覚を“見える化”する計測システムにおいて、センサー配置の最適な設計条件を突き止めた。3次元(3D)スキャナーで、男女5人の指先の変形量を計測。指が最も変形する指の腹部側面にセンサーを配置することで、触覚を推定する際のシステムの感度が最も良くなることを示した。指の感覚を定量的に測定できれば、職人の技能伝承などへの活用が期待される。

池田准教授らは指の腹部側面の変形を微小電気機械システム(MEMS)センサーで測定し、指先にかかる力や滑り方向の力を推定するシステムを開発している。指腹部の左右に設置した2個の力センサーが必要なデータを収集する。システムの感度を上げるには最も変形する位置に力センサーを配置することが重要だが、今まで指へのセンサーの配置は経験則に基づいた設計だった。

指の厚みや幅が異なる20代の男女5人が実験に参加した。指先と平らな物体との接触による指の腹部側面の変形を3Dスキャナーで計測。指の変形を分析したところ、指の先端は変形が少なく爪の根元の側面で大きく変形していることが分かった。さらに大きな指であるほど指の腹部の変形が大きくなることも示した。研究成果をセンサーの設計に生かし、システムの向上につなげる。

触覚は日常生活で重要な感覚だが、他人との共有が難しく、正確に経験を伝えにくい。指先の感覚を計測するシステムの感度が上がり、技能を持つ職人やスポーツ選手などの技能習得過程を解明できれば、自分自身の触覚を定量的に評価し効率的に技能を習得できる可能性がある。

また高い技能を持つベテランの触覚を測定し技能を数値化することで、新人への研修など職業訓練にかかる時間を減らせると期待される。

日刊工業新聞 2023年06月22日

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