受注けん引役はどこだ…工作機械、基幹部品に底打ちの兆し
工作機械の受注は下げ止まるのか―。日本工作機械工業会(日工会)の統計によると、受注額は1月から5カ月連続で前年同月実績を下回り、減少幅は5月が前年同月比22・2%減(速報値)と4月の同14・4%減と比べ広がった。ただ先行指標とされるモーターなどの基幹部品では受注に底打ちの傾向も見られる。工作機械の受注底入れに向け、中国市場の活性化などけん引役を探る状況が続く。
日工会によると1―4月期の工作機械受注額(確報値)は前年同期比12・6%減の5269億円だった。この数値を3倍して12カ月分と仮定すると約1兆5800億円となり、日工会が年初に示した23年暦年の受注見通し1兆6000億円を若干下回る。日工会の稲葉善治会長(ファナック会長)は足元の受注状況について「見通しと比べやや足踏みが見られるが、自動化やデジタル革新などのニーズに後押しされ高水準を維持している」との認識を示す。
DMG森精機は23年1―3月期の受注が前四半期(22年10―12月期)と比べて中国を含むほぼ全地域で増加した。「受注は思ったより良い」(森雅彦社長)という。牧野フライス製作所は23年1―3月期の受注が前四半期比で中国を中心に減少。永野敏之専務は「4―6月期が受注の底だろう」と見る。
工作機械の主要部品について、ファナックはFA(工場自動化)事業の受注が中国子会社で在庫が減りつつあることなどから「現地での引き合い次第という面もあるが、おおむね23年1―3月期が底ではないか」(山口賢治社長)。安川電機は工作機械などFA機器に広く使われるサーボモーターの受注が22年12月―23年2月期に底を打ち、3月も回復傾向にあるという。ただ小川昌寛社長は「産業を回復させる加速度はまだ強くない」とした上で「けん引役もまだもやっとしている」との認識を示す。
けん引役として期待される中国市場だが、設備投資の様子見が続く。日工会によると中国の受注額は1月から4カ月連続で前年同月実績を下回った。4月の中国の受注を業種別に見ると、全体の約4割を占める一般機械が前月比で33・5%増の102億円と4カ月ぶりに増加した。自動車は同12・2%減、電気・精密は同49・2%減だった。一般機械には幅広い産業が含まれ市場全体の設備投資需要を反映しやすいとの見方もある。稲葉会長は受注回復時期について「中国の工作機械メーカーの間でインフラ関係の投資が夏以降に戻ってくるとの見方があり、それに引っ張られて受注が少し伸びることへの期待感がある」とする。
オークマの家城淳社長は今後の受注動向について「あらゆる産業が夏以降に上がってくる中で、国内の自動車への投資が出てくることを期待したい」と語る。野村証券の前川健太郎アナリストらは12日付のリポートで日工会の5月の工作機械受注額の速報値を踏まえ「まだ回復の兆しはないが受注は大底圏に近づきつつあると考える」としている。
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