「日本で作って世界で勝つ」、オークマのロボット活用法
オークマが「日本で作って世界で勝つ」ため、2013年から進める工場のスマート化プロジェクト「ドリーム・サイト(DS)」。その第3弾として19年に可児工場(岐阜県可児市)に設置したのが、部品加工専用棟「DS3」だ。自動化が大きなテーマのDS3には産業用ロボットを積極的に導入。ロボットの稼働状況を“見える化”する仕掛けも施し、生産効率化を推進している。(名古屋・江刈内雅史)
9600平方メートルに及ぶ棟内の加工エリアには随所に産業用ロボットを配置している。特に目立つのは、主軸頭(主軸やその駆動装置などを備える部分)やパレットのような大型の加工対象物(ワーク)を持ち運ぶ最大可搬重量1350キログラムに達する大型ロボットだ。
最大620キログラムのワークを持ち、加工時に工作機械へと搬出入したり、加工後に洗浄装置内へワークを入れてバリ取りをしたりする作業を担う。
主軸の加工工程にもロボットを用いる。加工前にパレットの上に並んだ主軸となる無数のワーク。それを工作機械に搬入するロボットは、パレットの真上の天井位置に設置したビジョンセンサーによって各ワークの位置を判断して、確実にそれをつかむ。
レーザーヘッドを搭載し、焼き入れを可能にした自社製の複合加工機と、ワークの搬出入を担うロボットを組み合わせることで、工作機械の割り出し精度を左右するカップリング部品の焼き入れ工程も効率化。従来は外注で4日かかった焼き入れを2時間で完了できるようになった。
これらロボットの働きぶりを“見える化”しているのもDS3の特徴だ。オークマではDS1から見える化をテーマに、工場内の生産設備の稼働状況を確認できるシステムを導入していたが、ロボットは対象外だった。DS3からロボットも対象に入れ、見える化の水準を高めた。
こうした仕掛けを随所に施し、週末は72時間の無人稼働を実現した。とはいえ、DS3は完全な“無人工場”ではない。ロットが少なく、人手の方が効率的な作業は人が行い、大ロットの部品加工はロボットが担当。小ロットは人、大ロットはロボットと役割分担することで、生産体制の一層の効率化につなげた。
その最たる例がマシニングセンター(MC)にロボットを内蔵した「アームロイド」の活用法だ。ロボットを機外に置くよりコンパクトな上、「工作機械の加工プログラムの中にロボット操作の情報が入っており、非常に扱いやすい」(千田治光取締役常務執行役員)。アームロイドはパレットチェンジャーの部品である「テーパーコーン」の加工で活躍する。
一つのパレットチェンジャーに大量に付く部品だが、パレットチェンジャーはオプション品で生産量の変動が大きい。そこで、普段は通常のMCとして一品物の加工に活用。パレットチェンジャーの受注が入り、テーパーコーンの大量加工が発生したときはアームロイドがそれをまかなうことで、生産変動に強い体制を整えた。
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