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素材循環を可視化、帝人・東レがブロックチェーンで履歴管理に挑む

素材循環を可視化、帝人・東レがブロックチェーンで履歴管理に挑む

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繊維各社が製品の回収・再利用など素材の循環を可視化するため、ブロックチェーン(分散型台帳)を用いたトレーサビリティー(履歴管理)システムの構築を進めている。帝人富士通とともに、欧州企業との実証を実施。東レはソラミツ(東京都渋谷区)と開発を進める。欧米を中心に環境配慮の意識が高まる一方、実用化にはサプライヤーへの働きかけや、各企業が入力する情報の粒度といったルール整備なども重要になりそうだ。

帝人・富士通の実証プロジェクトの将来像

帝人は富士通とともにバリューチェーン上の環境負荷に関するデータの収集・分析や、リサイクル素材の出自を証明するプラットフォームの構築を進める。このほど、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を用いた自転車フレームの製造・販売を行うドイツのVFramesなどとの実証プロジェクトも実施。自転車フレームの再利用などを消費者に訴求するVFramesの環境価値の可視化を実現した。

実用化に向けては、消費者向けアプリケーションの展開を検討中。消費者は自身の購入した商品のリサイクル・製造工程や、二酸化炭素(CO2)排出量などを確認できるイメージだ。社会課題解決型ソリューションの「ユーバンス」を積極展開する富士通は、2023年度中のビジネス展開を目指している。

帝人コーポレート新事業本部のトン・デ・ワイヤー環境ソリューション部門長は、「欧州では情報の可視化が求められており、信頼できる情報の開示はパートナーとの関係強化にもつながる。将来は自動車や航空業界などへの展開を見据える」と話す。

東レは回収ペットボトルなどを原料として再利用するリサイクル繊維事業ブランド「&+(アンドプラス)」を対象に、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティーシステムの実証実験を実施した。&+ではトレーサーとして、ある物質を一定の濃度で入れることでリサイクル素材の利用を証明しているが、デジタル技術での証明も可能か検証を進めている。

実証では技術を確認できたものの、実用化には課題も見えてきた。「製造工程が複雑な中、用いられている素材の量など、どこまで情報の粒度を高めるべきか」(環境ソリューション室の須藤真史主任部員)といったルールの整備だ。

環境問題に対する各企業の意識のバラつきもある。欧州では、環境対応の有無を取引の判断基準とする企業がある一方、システムを本格展開した際、全ての企業に対するシステム利用費の転嫁については不透明な状況だという。

欧州連合(EU)では循環型経済実現のため、製品情報を管理する「デジタル製品パスポート(DPP)」が検討されている。堀野哲生繊維事業企画推進室長は「将来、トレーサビリティーの証明は当たり前になる。従来は手作業で行われていた環境に関する情報の管理を自動化できるという、デジタルの価値を訴求するような方向で取り組みを進めたい」と展望を語る。

日刊工業新聞 2023年月6月6日

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