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東レが量産技術を開発、レアアース使わない「高耐久性ジルコニアボール」の効果

東レが量産技術を開発、レアアース使わない「高耐久性ジルコニアボール」の効果

水熱処理と分散試験を行った後の開発品のジルコニアボール

東レは、レアアースを使わない高耐久性ジルコニアボールの量産技術を開発したと発表した。電気自動車(EV)などに使用されるリチウムイオン電池用電極材料を砕くのに用いることで、顧客企業はボールの交換頻度を低減し、製造コストを削減できる。2023年度中に滋賀事業場(大津市)内で年間100トンの生産を目指す。現行の設備を活用するため、追加の設備投資は不要。30年度にジルコニアボールで数十億円の売り上げを目指す。

主成分には低温焼結型のジルコニア、安定化剤には非レアアースを採用する。具体的な原料は現時点で非公表だが、カルシウムやマグネシウムの酸化物といった一般的な原料を想定する。価格は今後詰める。

実験では現行のジルコニアボールと比べ水熱処理後の脆弱結晶の発生率を約40%、分散試験後の摩耗量を約30%改善した。従来の一般的なジルコニアボールに用いるイットリアの産出は中国に集中しているため地政学的な供給不安も解消する。

焼結温度は従来品より低く、ボール焼結工程での二酸化炭素(CO2)排出量を2割削減できる。高耐久性を生かし、2年以内にジルコニアボール表面の再研磨によるリサイクル利用も進める。

ジルコニアボールは使用環境中の水や熱で結晶構造が変化し、劣化現象が生じる。そのため、摩耗成分の混入が製品の品質に影響を与え、耐性の向上が求められていた。

日刊工業新聞 2023年04月13日

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