「走る実験室」…技術にこだわった次世代レーシングカー完成
「日本のモノづくりを良くしたい」―。この思いにベクトルを合わせた60社が名を連ねる日本自動車レース工業会(戸田幸男会長)は、第2世代のレーシングカー「MCS4―24」を完成し、2024年から自動車レース「FIA―F4選手権」に送り出す。同車両は個々の優れた技術を結集し、テストを含め約2年で完成にこぎつけた。40台程度生産する。戸田会長が「走る実験室のようなもの」と例えるこの車両には、さまざまな思いが詰まっている。(大原佑美子)
MCS4―24は、次世代のモータースポーツを背負う若いドライバーが腕を競うFIA―F4カテゴリーの規格変更を機に新たに開発した。同工業会のメンバーが毎月理事会などを開き企画。デザインや設計は東レ・カーボンマジック(滋賀県米原市)が担当し、シートは戸田レーシング(岡山県矢掛町)が担った。
日本の技術にこだわって少量の車両を限られたコストで生産するのは難しい。それでも戸田会長は「安全な車両をコストを下げて提供し、若手ドライバーの技術の底上げに貢献したい」と話す。車両価格は世界統一だが「足が出てはダメ」(戸田会長)。メンバーが工夫を凝らしコストを抑える。
量産を前提にモノづくりをする日本では「とがった製品が出にくい。少量生産でもコストを抑制できる策を持つ欧州に遅れをとっている」と、東レ・カーボンマジックの奥明栄社長は指摘する。同工業会の試みは日本のエンジニア育成の役割も併せ持つ。
高い安全性や耐久性が求められるレーシングカーの部品を手がけられれば「未来のエアモビリティーなど新たな技術に応用展開できる」(奥社長)。
MCS4―24の成功は、工業会加盟企業のみならず日本の製造業の発展にもつながっている。
日刊工業新聞 2023年05月26日