DX人材の量と質、日米の差が鮮明に…人材像の設定・周知進まず
デジタル変革(DX)人材の充実度で日米の差が鮮明になっている。情報処理推進機構(IPA)が発行した「DX白書2023」によると、2022年度は21年度と比べて、DXを推進する人材の質・量の不足が日本で拡大。一方、米国では人材不足の解消が進んだ。日本企業はDX人材の人材像の設定・周知ができておらず、人材育成手段の多様性も米国企業と比べて乏しい。日本のDX人材不足の解消に向け、米国の施策がヒントになりそうだ。(張谷京子)
DX白書2023によると、DXを推進する人材の「量」の確保について「大幅に不足している」と回答した企業の割合は、22年度に日本が21年度比19・0ポイント増の49・6%と拡大。一方、米国では同17・6ポイント減の3・3%に縮小した。DX人材の「質」の確保に関しても、日米で同様の傾向がみられた。
日本でDX人材の不足が進んだ要因の一つは、過去1年間でDXに取り組む企業が増えたことだ。それに合わせて、DX人材のニーズが増えていることが考えられる。DXに取り組んでいる企業の割合は、日本で22年度に同13・5ポイント増の69・3%。米国は77・9%と高い割合を示すものの、21年度比では大きくは変わらなかった。
DX人材の不足を課題として抱える日本企業。DXで先進する米国企業を手本に、人材不足解消へつなげられるか―。白書で紹介されている人材施策における、日米企業の違いが一つの解になる。
例えば、DXを推進する人材像の設定・周知について。人材像を「設定し、社内に周知している」と回答した企業の割合は日本で18・4%だったのに対し、米国では48・2%。「設定していない」は日本で40・0%、米国は2・7%と、大きな差がみられた。
DXを推進する人材の育成方法でも、日本は後れをとる。「DX案件を通じたOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)プログラム」や「DX推進リーダー研修」といった人材の育成方法について日米の企業に質問したところ、日本では「実施・支援なし」との回答が複数の項目で70%台後半に上った。一方、米国では20%未満の項目がほとんどだった。
日本の情報通信技術(ICT)業界ではこうした実態を踏まえ、社内で培ってきた知見を活用して社外向けにデジタル人材の育成サービスを展開する企業も増えている。NTT東日本傘下のNTT DXパートナー(東京都新宿区)は、地域の中小企業や自治体向けに講義やワークショップ(参加型講習会)を組み合わせて展開。インターネットイニシアティブ(IIJ)は、ネットワークとソフトウエア開発の技術に精通したエンジニアを育成する「IIJアカデミー」を開設し、第一期生の実習を5月に始めた。
産業界ではDX人材の獲得競争が激化している。企業は人材不足の解消に向け、外部サービスを活用した自社内での人材育成も有効となりそうだ。