富士通が新事業ブランド軸に成長加速、新経営体制の全容
富士通は新事業ブランド「Uvance(ユーバンス)」を軸とする成長戦略の加速に向けて、新経営体制を始動した。ソリューション系ビジネスグループ(BG)の再編に加え、世界4リージョン(地域)のうち、日本を含む3地域のマネジメントのあり方なども一部見直した。「デジタル変革(DX)企業」への転換を掲げる同社にとって、2023―25年度の新中期経営計画は正念場であり、この3カ年をどう戦うかが問われる。
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4月からの新経営体制ではグローバルソリューションBGを再編し、システム開発を含めたインフラサービスを一手に担う「グローバルテクノロジーソリューションBG」と、ユーバンスが目指す社会課題解決型ソリューションを目玉とする「グローバルビジネスソリューションBG」の二つに分けた。
グローバルビジネスソリューションBGは、これまでBG内の本部だったユーバンス事業をBGとして切り出した格好。これにより組織の壁を超え、共創や社会実験などの取り組みを進めやすくすることを目指す。ユーバンス関連の売上高は25年度には22年度実績(2000億円)の3―4倍強を視野に入れる。
二つのBGをそれぞれ指揮するのは島津めぐみ、高橋美波の両執行役員シニア・エグゼクティブ・バイスプレジデント(SEVP)。両BGがユーバンス事業をけん引する。新体制では大西俊介執行役員SEVPが率いるグローバルカスタマーサクセスBGの守備範囲も見直し、顧客対象をグローバル展開している大手企業数十社に絞り込んだ。
同BGが個社対応に特化することで、それ以外は、民需や公共、文教、ヘルスケアなど国内ビジネスに軸足を置く「Japanリージョン」へと集約した。結果、同リージョンは総勢1万9000人弱と、同社最大規模となり、マネジメントは堤浩幸執行役員SEVPを筆頭にEVP3人を加えた集団体制とした。こうした新体制がどのような相乗効果を生み出すかが注目される。
インタビュー/富士通副社長・古田英範氏
組織改革の進捗(しんちょく)などを古田英範副社長に聞いた。(編集委員・斉藤実)
―時田隆仁社長が就任した19年当初は、社長、副社長の二頭体制が際立っていました。
「権限をいったん集中させ、約3年がたち、改革への道筋が見えてきた段階で権限を委譲していった。私は当初、最高技術責任者(CTO)と最高情報責任者(CIO)を兼務していたが、富士通研究所を本体に吸収した上で、ヴィヴェック・マハジャン執行役員SEVPにCTOを引き継いだ」
―CIOは。
「CIOはグループ内の独自IT部門を吸収し、方向性が決まった段階で福田譲執行役員EVPに委ねた。福田氏は当初、最高デジタル変革責任者(CDXO)補佐だったが、4月に時田社長からCDXOも引き継いだ」
―マハジャン氏は4月から最高ポートフォリオ責任者(CPO)も兼務しています。大西、堤、高橋、福田の各執行役員も含め、改革の担い手は外部登用人材が目立ちます。
「CPOは事業と商品のポートフォリオを決める。一言でいえば“断捨離”。組織間で重複した開発を避け、商品を統一するのが狙いだ。マハジャン氏をはじめ、外部登用人材は変革に必要なグローバルでの経験と知見があり、当社以外にも豊富な人脈を持っている。そこに期待している」
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