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水災被害をスマホ申告、保険金支払い期間短縮へ

水災被害をスマホ申告、保険金支払い期間短縮へ

東京海上のアプリを利用し、浸水高を推定する(イメージ)

水災の被害状況を契約者がスマートフォンで申告できるツールが広がってきた。東京海上日動火災保険はスマホを使って床上浸水した壁とペットボトルを同時に撮影すると、浸水高を自動計測するアプリケーションを導入。あいおいニッセイ同和損害保険もペットボトルと壁の画像からスマホで被害を申告するツールを採用した。水災被害は広域化・激甚化しており、各社とも簡単なツールによる被害申告で、保険金支払いの期間を短縮したい考えだ。(大城麻木乃)

東京海上は契約者がスマホでアクセスして被害状況を申告できるアプリを導入した。アプリの手順に従って壁とペットボトルの画像を撮影すると、人工知能(AI)が浸水高をを示す。

通常は鑑定人が現地調査をして被害状況を把握するが、大規模災害時には鑑定人が不足し、現地調査が遅くなる場合がある。契約者が自ら申告できる体制を整え、保険金支払いの迅速化につなげる。

あいおいニッセイ同和損保はスマホのチャット形式で契約者とやりとりし、被災した画像を送れるツールを取り入れた。同じMS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険が2021年度に導入したツールを活用した。

三井住友海上によると、チャット形式は21年度に平均で約2週間、従来手法より保険金の支払い期間を短縮できたとしている。中には被災の連絡をもらった当日に支払い手続きが完了し、2日後に入金した例もあるという。

とはいえ、あいおいニッセイと東京海上は当面、大規模水災に限ってデジタルツールを利用することを想定する。規模の小さい水災では、従来の立ち会い調査でも契約者を比較的待たせずに対応可能とみているためだ。あいおいニッセイの場合で、18年の広島県を中心にした西日本豪雨並み、事故受付件数で2000件を超える規模での利用を予定する。

損保業界では損害保険ジャパンが18年に通信アプリ「LINE」で保険金請求ができるサービスを開始。21年にはAIがペットボトルと壁の画像から浸水高を測定し概算保険金を示すサービスを導入し、同業他社でもデジタル化の動きが広がる。

契約者が被害を自己申告する場合、偽の画像を申告する恐れもあるが、各社はドローンや人工衛星画像を使った被災地域の実態把握も同時に進め、不正対策を取る。ドローンなどを飛ばすことで地域ごとのおおよその浸水高が分かり、異常な申告を見抜ける仕組みだ。

こうしたテクノロジーを使った被害状況を把握する仕組みの進歩もスマホを活用した自己申告を可能にしている。

日刊工業新聞2022年10月12日

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