若者を“日本酒ファン“に!京都清酒メーカーの戦略
度数下げ飲みやすく
京都の清酒メーカーが若年層の取り込みに向けた商品を相次ぎ投入している。黄桜(京都市伏見区)は日本酒ベースのハイボールで新シリーズを展開。従来と比べアルコール度数を下げ、酒離れが進む若年層を掘り起こす。宝酒造は3月、売れ筋のスパークリング清酒「澪(みお)」を3年ぶりにリニューアル。各社とも若者の“日本酒ファン”拡大を目指す。(京都・小野太雅)
黄桜は2010年に発売した「黄桜日本酒ハイボール」シリーズを「黄桜ソフトハイボール」シリーズとして新たに展開する。日本酒味、ゆず酒味、梅酒味の全3種。アルコール度数は4―4・5度で、以前と比べて最大3・5度下げた。「日本酒を飲まなかった人でも飲みやすくすることで魅力が伝われば」(営業統括部担当者)と、20代後半から30代をターゲットとする。
若年層が手に取りやすいよう、パッケージデザインには動物のイラストを取り入れた。「見た目やコンセプトが面白いと、追加受注に加え、これまで取引のなかった販売店も興味を示している」(同)と手応えをつかむ。
宝酒造は、若者からの人気が高い「澪」をリニューアルした。同時に甘さを抑えた新商品「澪〈CLEAR〉」も発売し、新たな顧客層の開拓を目指す。一般の日本酒に比べると、もともと購入者に占める若年層の割合が高く、特に20―30代の若者に人気があるという。11年の発売以来、累計販売数は9000万本超(300ミリリットル換算)。海外での販売も好調で、21年度の輸出量は12年度から7倍超伸びた。
澪の購入者の半数は日本酒が初めてという人が占めており、日本酒ファン層の拡大に貢献している。同社は「日本酒のおいしさを知ってもらう入り口」(営業担当者)と位置付ける。
月桂冠(京都市伏見区)はスパークリング清酒「うたかた」のラベルデザインを3月に変更した。うたかたはフルーティーな香りと味わいが特徴で、アルコール度数は約6度と日本酒としては軽めに設定。日頃から日本酒を消費する60―70代のボリュームゾーンではなく、20―50代の日本酒にあまりなじみのない層に照準を合わせている。うたかたの販売は急激に伸びており、同社では23年度の販売数量を22年度比8割増で見込んでいる。
京都の酒造関係者は「従来、日本酒になじみのなかった人が飲み始めるような、日本酒の入り口となる商品を開発することは酒造会社にとって重要だ」と指摘する。