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農水産業に光触媒技術、陸上養殖施設で水浄化

カルテックが実用化目指す

カルテック(大阪市中央区、染井潤一社長)は陸上養殖向けに、光触媒技術を使った水浄化装置を導入する試みを始める。サバの養殖施設に設置し、性能などを評価する実証実験に5月から着手する。従来装置に比べランニングコストを抑えつつ稼働期間を延ばせる見通し。2024年内の実用化を目指す。

陸上養殖の閉鎖循環式システムは物理濾過や生物濾過を組み合わせて水を浄化する。深紫外線(UV―C)を用いて水を殺菌する場合、装置の導入には数百万円以上かかり、定期的に光源を交換する必要がある。

光触媒による浄化装置は主材料の酸化チタンに光を当てることで生じる化学反応を応用し、有機物を水と二酸化炭素(CO2)に分解する。一般的な発光ダイオード(LED)を光源に使えるため維持費用を従来の10分の1まで抑えられる可能性があるという。メンテナンスの手間も減らせる見通し。

農業にも同技術の活用を見込む。22年に農家と協力し実証実験を行った。ミカンなどを保管する倉庫に光触媒技術を使った除菌脱臭機を設置したところ、収穫後の農作物が出すエチレンガスの分解や常在菌の抑制に一定の効果があることを確認した。劣化を抑えられる点を訴求し、23年度から同装置を農家向けにも販売する。初年度で1億円以上の売り上げを目指す。

カルテックは大手電機メーカー出身の染井社長が18年に立ち上げたスタートアップ。コロナ禍で除菌脱臭機が注目され、売り上げが急伸した。今後は海外展開にも力を入れる方針。

日刊工業新聞 2023年03月31日

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