SWCCと古河電工が新事業に注力、「電線技術」の生かし方
SWCC(旧昭和電線ホールディングス)や古河電気工業が、主力の電線事業とは一線を画した新事業領域の拡大に力を注いでいる。巻線やレーザー、光通信技術といった従来の電線事業で培った技術力を生かし、医療向けの部品や機器、ソリューションなどの研究開発を進める。ただ、医療機器の市場投入までには多様な手続きを要するため、収益化に時間がかかる課題もある。長期視点での収益源の多様化に向けて実行力が試される。(高島里沙)
SWCCが2025年度をめどに発売を目指すのが、医療機関と共同研究中のワイヤレス充電式点滴スタンドだ。薬や輸液を正確に患者に投与するためのポンプなど、点滴スタンドに搭載する機器へ非接触で給電できる。電気自動車(EV)の給電にも用いられるワイヤレス給電コイルを充電システムに活用した。点滴スタンドにはバッテリーが積んであるため、リハビリや病院内の移動など長時間の稼働に耐えられる。
ワイヤレスで電源コードが不要のため、コードにつまずいたり、引っかかったりする心配がない。しゃがんでコンセントを差したり抜いたりする手間もなくなる。利用者にとっては便利だが、既存の病院への導入はハードルが高く、新たに建設される病院や手術室に親和性があるという。従来の点滴スタンドの2倍程度に価格を抑えられるよう、病院でのニーズを聞きながら改善を進める。
また同社では、医療・産業用カテーテルや内視鏡向けの医療用チューブや電極付きのカテーテルチューブの開発を進める。得意とする樹脂の押出加工に加え、電線製造で培った電極取り付けや屈曲機構などのアセンブリー加工にも対応する。医療以外にもロボットやEV、自動運転などを含めた新事業の拡大を模索する。
体内器具、発光で位置検知
古河電気工業はフォトニクスと光ファイバーの製造、部品加工技術などを生かして医療分野に打って出る。光学部品やレーザーを用いた医療機器を開発中だ。体内に植え込んだ医療器具を簡単に検知するソリューション「テルミノ」は、光ファイバーで体内の器具を発光させることで位置を検知可能。可視光の発光で目視による位置検知ができ、内視鏡やカテーテルに組み合わせた応用にも対応できる。
またレーザーで患部を焼灼(しょうしゃく)するアブレーション用レーザーや、病変に応じた光照射を自由自在に制御する光ファイバープローブなども展開する。レーザーは可視光から赤外光まで顧客が希望する波長のレーザーを作製でき、光の出力も制御可能だ。
ただ医療機器は市場投入までに規制当局の審査などを要するため、メーカーにとっては収益化に時間がかかる課題もある。電線各社が電線加工技術などを生かした医療機器を普及するのは、もう少し先になりそうだ。先行投資の実効性を高め、新事業の柱として育成できるかが問われる。