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「いくら何でも大き過ぎる」…産業用ロボットメーカーを倒産に追い込んだ“22億円”

「いくら何でも大き過ぎる」…産業用ロボットメーカーを倒産に追い込んだ“22億円”

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金額大きく一気に信用不安広がる

トガシ技研が2月28日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。負債額は約56億円。

倒産理由は融通手形取引、架空売り上げの計上だ。その相手先とされる企業の中では既にオフィスエフエイ・コム(栃木県、以下オフィス社)が、2023年7月末に民事再生法の適用を申請している。この両社以外にも資金繰りに行き詰まり、対外信用を失っている企業がいくつかある。

トガシ技研は88年創業、99年2月に法人改組した産業用ロボットメーカー。過去10年、業績は順調に拡大、特にここ数年はメーンバンクや政府系金融機関からの支援を得て大幅に設備を増強。もともと、強みとするのは自動車向けだったが、これに加えて半導体製造装置向けに領域を広げていた。22年7月期には売上高約55億円を計上。ただし、架空売り上げを除いた売上高はわずか約7億6800万円だったという。

きっかけはオフィス社に対する22億円強の焦げ付きだった。オフィス社は97年創業、99年10月に法人改組した。製造現場の自動化に関わるFA機器の設計、製作を主業とし、21年12月期の年売上高は約80億円。ソフト開発技術には定評があった。オフィス社の側からみるとトガシ技研は発注先ということになるという。

22年7月末、オフィス社は手形決済を目前にして唐突に倒産した。負債額は約60億円。倒産理由はコロナの感染拡大やウクライナ問題、半導体不足、それによるDX工場建設の遅れ、納期や入金遅れということだったが、債権者名簿からトガシ技研の焦げ付き額が22億円強にも達することが判明。「いくら何でも金額が大き過ぎる…」と一気に信用不安が広がっていく。昨秋の時点で既に、対外信用は失われていた。

この両社以外にもオフィス社の民事再生申請直後に決済難を生じ、対外信用を失っている企業もある。混乱はまだ続きそうだ。(帝国データバンク情報部)

日刊工業新聞 2023年04月20日

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