倒産の増加に拍車か、「ゼロゼロ融資」の返済ヤマ場へ
コロナ融資で抑制されてきた企業倒産の増加リスクが高まってきた。コロナ禍で売り上げが落ち込んだ企業に、実質無利子・無担保で融資した「ゼロゼロ融資」の利払いを含めた返済開始は、今春から夏にかけてヤマ場を迎える。事業の抜本的な立て直しが進まない企業にとっては積み上がった債務の返済負担に加え物価高が重くのしかかる。政府は新たな借り換え保証で資金繰りを下支えする構えだが、利用の前提となる経営計画の策定が融資先選別につながり、倒産増に拍車をかける懸念も払拭(ふっしょく)できない。(編集委員・神崎明子)
金融機関に返済できなくなった企業の融資残高を肩代わりする信用保証協会の「代位弁済」。東京では22年4月から12月までの件数が前年同期に比べ43・6%増えた。保証期間の延長や返済方法など「条件変更」は同9・7%増。月平均約3500件に上る。
倒産予備軍の広がりを裏付けるように、企業倒産はすでに増加局面にある。帝国データバンクによると22年の企業倒産件数は3年ぶりの前年比増加で、月ベースでみると、5月を転換点に12月まで8カ月連続で前年同月を上回る。新型コロナウイルスの感染拡大前に比べると、政府の手厚い支援策で倒産発生が抑制された低水準であるものの、潮目変化は明らかだ。
政府系金融機関と民間合わせて約42兆円が投じられたゼロゼロ融資。初回返済までの「据え置き」は最長5年が可能で、利払いは3年間、実質的に免除される。20年3月のスタートから今年は3年の節目を迎える。
関係者によると、利用企業の約7割がすでに元金返済を始めているものの、利息も含めた本格的な返済開始は「23年3月から7月がピーク」とみられる。政府は「(民間実施分の)返済開始は23年7月から24年4月に集中する」ことを前提に施策を講じる。
コロナ禍当初の倒産抑制に貢献したゼロゼロ融資だが、影響長期によって業績回復が進まない企業にとっては返済負担が重荷となってきた。原材料価格の上昇や進まぬ価格転嫁も収益を圧迫。過剰債務が顕在化しつつある。政府は「ゼロゼロ」からの借り換えに加え、他の保証付き融資からの借り換えや事業再構築に伴う資金需要にも対応する新たな保証制度を創設し10日から取り扱いを開始した。
注目されるのは制度利用の条件が経営行動計画書の作成や金融機関の伴走支援である点だ。黒字化目標など収支計画や具体的なアクションプランが求められるため当面の運転資金を確保し、本質的な課題を先送りすることは表向きは難しくなる。「計画策定過程で実現可能性が低いと判断されれば、支援先の選別が進む可能性は否定できない。伴走支援を進めるにも人員は限られる」(帝国データバンク情報統括部の阿部成伸情報編集課長)。
日銀の金融緩和縮小に伴う金利上昇リスクもにらみつつ、手厚い支援の副作用を最小限に抑え過剰債務からの脱却をどう図るか。政府、金融機関の目配りが極めて重要な局面となる。