NEDOもJSTも本腰、理事長肝いり「プロマネ育成」の全容
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と科学技術振興機構(JST)が、国プロを率いるプロジェクトマネージャー(PM)の育成に本腰を入れている。従来は民間のベテランなどの即戦力をPMに当ててきたが、プロジェクト管理のノウハウが属人化し蓄積しない課題があった。そこでNEDOはPMの評価基盤を整え、JSTは定年制雇用枠を設けて長期育成を始めた。どちらも理事長肝いりの事業になっている。(小寺貴之)
NEDO 評価基盤でスキル可視化
「人材育成や適材適所が重要と言われるが、実行するにはスキルを定義し見える化する必要がある」とNEDOの石塚博昭理事長は説明する。PMのレベル認定制度やスキルマップの整備を進めている。民間とNEDOのPMで異なるのは公人としての振る舞いだ。
チームマネジメントや予算管理、語学、知財などの一般的な能力に加え、多種多様なルールやマニュアルを理解する必要がある。そして政府や企業、大学などの文化のまったく違う人間同士の合意形成を導き取りまとめる能力が求められる。いわゆる交渉力や人間力が必要だが、この評価が難しい。
さらにプロジェクト推進で最も難渋するのは、複数のルールのはざまで生じる問題だ。ルールに縛られ動けなくなったら、それが定められた目的や根本に立ち返って解法を紡ぎ出す必要がある。これも事前評価が難しい。
そのため、どんな場面でどんな行動をとったかという結果を基に評価している。適切な行動をとれたなら力が備わっていたという考え方だ。反面、多部門を経験しないと認定レベルが上がり難いという問題が生じた。
そこでスキルマップを整備する。業務に必要なスキルを洗い出し、まずは自己点検などの形で運用性を検証する。米倉秀徳課長代理は「企業や大学からの出向者と定年制職員が補完し合う土台にしたい」と説明する。
JST 定年制雇用の枠広げ承継
JSTも同様の課題を抱える。近年、補正予算や期限のある基金を用いた事業が増え、任期制職員が運営を支えてきた。ただこうした職員は数年で去っていくのが課題だ。
そこで定年制雇用の枠を広げ、ノウハウの引き継ぎが可能な組織を作る。
求めるのはただのマネージャーではない。イノベーションのプロデューサーだ。JSTの橋本和仁理事長は「社会が何を求めているか見極め、研究現場とつなぐ人材」と説明する。大学研究者がベンチャーを経営するように、基礎研究と社会実装が同時並行で進むようになった。JSTはこれを仕掛ける人材を求める。
経済産業省と文部科学省の両資金配分機関でPMの評価基盤とポストが整備される。研究者と同様にPMも組織を移りながらキャリアを築く環境が整おうとしている。もともと資金配分機関は科技政策の種を仕込んだり、ベンチャーキャピタル(VC)と連携して社会実装を促したりと、産学官の人間が交差する場として機能してきた。2機関の取り組みが相乗効果を発揮し、野心的な人材を惹きつけられるか注目される。