舶用低速エンジン唯一の国産ブランド「UEエンジン」が世界シェア10%突破へ
ジャパンエンジンコーポレーション(J―ENG)の舶用低速エンジン唯一の国産ブランド「UEエンジン」が2023年度にも生産台数(2ストローク)ベースで世界シェア10%を突破する見通しだ。中国のライセンシー(実施権者)の受注が急拡大しており、24年度には生産台数が22年度比2倍超に膨らむ見込み。世界シェア10%突破は三菱重工業として同エンジンの生産を始めた1955年以来初という。
J―ENGのUEエンジン事業は自社生産に加えて、国内では赤阪鉄工所と、海外では中国船舶重工集団柴油機や韓国・現代重工業など6社とライセンス契約を結んでいる。自社とライセンシーを合わせたUE陣営全体の世界生産台数は23年度に同1・8倍の115台を見込む。
J―ENGは17年に、UEエンジンを手がけてきた三菱重工の事業会社を旧神戸発動機が承継して設立した。メーカーであると同時に、ライセンサーとしての顔を持ち、ライセンシーからのロイヤルティー収入を安定的に得られるビジネスモデルが特徴だ。近年は技術指導を強化している。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業として、次世代エンジンも開発中。アンモニ燃料エンジンは25年に、水素燃料エンジンは26年に開発が完了し、本格的な実証を始める予定だ。既存のディーゼルエンジンを安定成長させつつ、国際海運における温室効果ガス(GHG)排出削減に対応して、事業領域を広げている。
舶用低速エンジン業界では、国内首位の三井E&SがIHIグループから事業買収して発足した新会社「三井E&S DU」を始動した。日立造船では今治造船(愛媛県今治市)からの出資を受け入れた「日立造船マリンエンジン」が事業を始めた。いずれも「MAN―ES」と「WinGD」のダブルライセンシーとしてエンジンを生産する。
船舶用エンジンは海上輸送を支える重要な製品。経済安全保障推進法に基づく特定重要物資に指定されており、各社が技術・生産基盤を強化している。