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パワー半導体のスイッチング損失49%減、東大が専用チップ

パワー半導体のスイッチング損失49%減、東大が専用チップ

パワー半導体への制御信号をリアルタイムで最適化(東大提供)

東京大学の高宮真教授と畑勝裕助教、張狄波大学院生らは、パワー半導体のスイッチング損失をゲート操作の工夫で49%削減することに成功した。パワー半導体の通電と絶縁を切り替える制御信号を2段階で送ると、損失とノイズを抑えられる。この機能をASIC(特定用途向けIC)としてワンチップ化した。電気自動車(EV)に適用すると数%の電費改善に相当する。

パワー半導体では急に大電流を流すと過剰な電流ノイズが生じて破壊につながる。一方でゆっくりと電流を大きくすると損失が生じ、ノイズとスイッチング損失がトレードオフの関係にあった。

そこで制御信号を2段階で送り、ノイズと損失を抑えた。この二段階信号の最適波形が温度や電流量によって変動するため、ASICにセンサー回路や制御回路を組み込んだ。6ナノ秒(ナノは10億分の1)で制御信号の波形を最適化し続ける。

シリコンのパワー半導体で600ボルト80アンペアの条件で49%の損失を低減できた。炭化ケイ素など、パワー半導体の種類は選ばない。周波数はメガヘルツ(メガは100万)程度まで適用できる。先行研究では56%の損失低減がEV全体で7・6%の電費改善になるという報告がある。パワー半導体をシリコンから炭化ケイ素に切り替えるのと同等の省エネが期待される。


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日刊工業新聞 2023年03月24日

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