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名古屋市大が定説覆す、紫外線殺菌は「低強度・長時間」が効果的だった

名古屋市大が定説覆す、紫外線殺菌は「低強度・長時間」が効果的だった

(a)紫外線強度10mW/cm2で1秒の場合 (b)紫外線強度0.1mW/cm2で100秒の場合。紫外線照射量はどちらも10mJ/cm2(名古屋市大提供)

名古屋市立大学大学院の松本貴裕教授と立野一郎講師、長谷川忠男教授らは、紫外線殺菌において、低強度の紫外線で長時間殺菌する方が高強度の紫外線で短時間殺菌するより殺菌効果が大きいことを示し、従来の定説を覆した。これまでは紫外線強度と時間を掛け合わせた照射線量が同じなら殺菌率は同じとされていた。活性酸素によるウイルスや細菌の死滅という新しい紫外線殺菌メカニズムを明らかにした。効率的な紫外線殺菌技術や装置開発に役立つ。

紫外線照射線量は一定のまま照射強度を変え、大腸菌の殺菌実験を行った。すると、強度1平方センチメートル当たり10ミリワットで1秒の場合の殺菌率が約90%に対し、強度が同0・1ミリワットで100秒では殺菌率は約99%と高かった。これまでの定説では、両者の殺菌率は同じになるとされていた。

実験結果を確率微分方程式を用いて解析した。その結果、従来は紫外線照射でDNA(デオキシリボ核酸)構造が破壊されて殺菌されると考えられてきたが、これに加え、活性酸素によるウイルスや細菌の死滅効果が共存することが分かった。

活性酸素は紫外線照射によりウイルスや細菌内で生成され、これがDNAや脂質層を破壊する。照射する紫外線強度が強いと、大量に活性酸素が生成するが、すぐに酸素と結合して活性がなくなり、殺菌効率が下がってしまう。

日刊工業新聞 2023年03月09日

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