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《加藤百合子の農業ロボット元年#06》この仕事で改めて見てきたこと

行政の研究体制と安全の仕組みづくりについて考えみた

事故を減らすため“PDCA”の運用徹底を


 その2として機械の安全について取り上げる。身近な機械安全でいうと、交通事故が思い浮かぶのではないかと思う。運転者の高齢化もあり、アクセルとブレーキの踏み間違いや視認判断力低下から信号無視などによる事故が起きている。また、若年者の無謀運転や薬物使用状態での運転も各地で悲惨な事故を起こしている。

 では事故に対し、運転者、製造者の各立場でどのような対策を進めているだろうか。運転者は免許制度であり、70歳を超えると免許更新が高齢者用のチェックを受けるようになっている。製造者は、障害物に対し停止する機能や自動運転に向けての機能開発が進められている。また、小さいことでもリコールを行い、早期発見、早期対応が徹底されている。

 しかし、免許を保持していないとエンジンがかからない仕組みや、薬物やアルコールの匂いを検知したらスタートできない仕掛けも一般的ではない。ということは、車と鍵があれば運転は実質可能となる。この点は一歩踏み込んだ対策が必要な気がするが、使用者が多い自動車では安全の仕組みができてきており、その改善も進んできている。

使用者と製造者と一体で


 一方、本題の農業機械はすっかり遅れてしまっているのが実情だ。まず状況として、死亡事故は減る傾向になく、平成25年度(2013年度)の1年間に350人が亡くなっている。そして、機械にまつわる事故はその65%強を占める。また、除草機や管理機など刃が回っている機械でも、指の切断等の重軽症を負うことも多い。農業ロボットの安全を検討するにあたり、これまでの安全に関する仕組みを調べていくと事故が減らない理由がみえてきた。

 どうも安全のPDCAが回っていないようなのだ。単独事故が多く、事故を起こしたことが恥ずかしいと思う農業者が多いこと、そして保険もしっかり支払われるため、その責任が使用者なのか製造者なのか追及されないことが一つ。使用者側は機械の運用について特に免許があるわけでもなく、想定外の使用方法で事故が起こることが二つ目。製造者側は安全の施策が品質として評価されにくく、事故情報も乏しい中でさらに対策し辛いのが三つ目。

 他にも要因を挙げることはできるが、このまま事故が減らない状態を放置して自動走行等の農業ロボットを導入するのは難しい。マーケットの安全を向上するためには、使用者と製造者と一体となってPDCAが回る仕組みづくりが急がれる。
日刊工業新聞2016年1月27日/2月10日 ロボット面
加藤百合子
加藤百合子 Kato Yuriko エムスクエア・ラボ 代表
安全のコストは使う側の理解も必要です。農業が憧れられる仕事になるためには、業界全体で安全に対する意識改革が必要です。

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