コネクター設計効率化へ、日本航空電子のAI活用の今
日本航空電子工業は、将来的にコネクターの設計や放射電磁界の予測に人工知能(AI)を活用するため、プリント基板を対象に機械学習を用い始めた。回帰分析やクラスタリングといった複数の手法を利用する。従来、放射電磁界を予測するのに数値解析では数十分を要していた事例が、AIでは数秒で終わるといい、作業の効率性向上につながる。今後1―2年以内にはAIをコネクターに応用し、実務でのAI利用を本格化する。
「AIを使うのは意外と簡単」とコネクタ事業部製品企画部の池田浩昭氏はAIの印象を語る。実際、プログラミング言語「Python(パイソン)」や、分析ソフト「アナコンダ」など入手しやすいソフトウエアを用いているという。
AIを使い始めたのは、放射電磁界を予測するためだ。電子機器からは電磁波が発生しており、電磁波がテレビやラジオなどの無線機器を妨害しないように、予測を通じて対策を講じる必要がある。
そこで、従来は数値解析を通じて放射電磁界を予測する方法を用いてきた。だが「数値解析を何回も繰り返す必要がある」(池田氏)。時間の制約があることから、機械学習の活用を決めた。
2019年ごろから活用を始め、20年にはデータの作成や機械の訓練、放射電磁界の推論精度を確認してきた。例えば、プリント基板の配線の長さや基板の厚さなどを条件として読み込ませ、放射電磁界との関係性を分析している。
ほかにも基板の配線同士の間隔や基板の厚みを変数とし所定の性能を満たすかどうかについて、多くの条件から突然変異などを通じ最適解を導く「遺伝的アルゴリズム」を用いて分析。「コネクターへの応用もできる」(池田氏)と強調する。また、似たデータを分類する「クラスタリング」では、基板に流れる電流の大きさを色で示した画像を短時間でグループ分けできる。分類により放射電磁界の大きさと電流の流れ方の関係性を推測できる。
AIを導入した当初は変数の最小限の組み合わせのほか、人が調整する変数「ハイパーパラメーター」の決定、そして膨大なデータの整理などが課題だった。現在も試行錯誤しながら課題に取り組んでいるという。
AIによってデータ同士の関係性が数値として出力されるものの、具体的な内容は人が判断することになる。池田氏は「最終的には、データ間の関係性を人が分かる形にしていきたい」と今後の目標を話す。(阿部未沙子)