商品・サービスのESGを評価する「AIシステム」の貢献
aiESG(福岡市博多区、馬奈木俊介代表=九州大学主幹教授)は、商品やサービスの社会や環境への配慮を評価する人工知能(AI)システムを開発した。海外のサプライチェーン(供給網)までをさかのぼり、商品が供給されるまでの人権や環境破壊などのリスクを3290指標によって明らかにする。商品・サービス単位のESG(環境・社会・企業統治)分析サービスとして企業に活用を呼びかける。
馬奈木九州大学主幹教授の研究チームが国際機関や各国政府、業界のデータを集め、学術的にも信頼できる評価基準を構築した。aiESGは基準を基に1万5979種の商品・サービスをAIで分析する。主な指標は賃金や児童労働の有無、ジェンダー平等(男女格差解消)、温室効果ガス排出量、水や鉱物資源の消費量など。
企業は部材や素材の名称、産地が分かると分析結果を得られる。社会や環境への配慮を欠いて生産されたリスクが高いと判定された項目から優先的に調査し、場合によっては調達先の見直しを判断できる。業界平均との比較もでき、改善点をつかめる。
貧困層が多い国では労働者に低賃金労働を強制している農園が存在する。水質悪化が激しい地域では現地工場が汚染源となっている可能性がある。こうした農園や工場と取引する企業が、人権侵害や環境破壊に加担していると批判される事態が起きている。
サプライチェーン全体での持続可能性が求められており、企業はリスクの把握と改善が必要となっている。環境負荷は二酸化炭素(CO2)排出量で定量化できるが、人権やジェンダーなどの「社会」は評価が難しかった。aiESGの評価結果は認証機関による検証も受けられるため、投資家や消費者にも説明しやすい。まずは九州電力と西部ガスホールディングスが評価を行う予定だ。
日刊工業新聞 2023年01月31日