ファミマ「売り場作り助言」、ローソン「値引き」…コンビニで広がるAIの活躍の場
コンビニエンスストア各社が店舗運営における人工知能(AI)の活用を加速している。発注や値引きなど経験が必要で負荷が大きい業務を、AIが担うシステムを開発。正確な発注や効果の高い値引きによる店舗利益の向上に加え、人材不足や業務効率化など複数の課題を一気に解決する可能性があるツールとして、導入店舗の拡大を進めている。(高屋優理)
ファミリーマートは店長の業務をサポートする人型AIアシスタント「レイチェル/アキラ」を、2024年2月末までに約5000店舗に導入する。人型AIアシスタントは、クーガー(東京都渋谷区)が開発。人型AIアシスタントが売り上げや来店客数などのデータを分析し、店舗運営に必要な発注や売り場作りのポイントなどをアドバイスし、店長業務をサポートする。
人型AIアシスタントはクーガーの音声認識技術やゲームAI技術に加え、データ検索技術を搭載しタブレット端末で操作する。タブレット端末に話しかけることで、必要な情報をアドバイスしたり、簡単な雑談などもできる。店長の性格などに合わせたコミュニケーションも可能だ。店舗運営のアドバイスは、店長だけでなく、スーパーバイザー(SV)の業務負担軽減にもつながり、全体での生産性向上を目指す。
同社では3月末までに1000店に導入し、順次導入店舗を広げていく方針だ。
ローソンは各店舗の在庫数や販売実績に応じた値引き額をAIが分析して提案する「AI値引き」を、24年2月までに全国展開する。在庫や納品予定数、過去の販売実績に応じて、最大の利益が見込める値引き額をAIが計算する。同社は21年に東北地区で実証実験を実施し、実験結果を受けて一部を改良して22年6―9月に東京の162店舗で実証実験を展開した。
21年の実証実験では対象商品のバーコードを専用タブレットに配信。バーコードをスキャンして金額を手入力し、値札シールを印刷する仕組みだった。店舗からの意見などを反映し、22年はバーコードを配信後、印刷するだけで値札シールが出てくるように改め、作業を簡素化した。
また、21年は配信する時間が16時と決まっていたが、22年は四つの時間から店舗が選択でき、2段階での値引きも可能になった。AI値引きの導入により、21年の実証実験に参加した店舗では廃棄金額を約2・5%削減し、粗利が約0・6%増えるなどの効果があった。
次世代CVS統括部の石川淳マネージャーは「全国展開に向けていくつか改良し、さらに使いやすくしたい」と話す。ローソンでは機会ロスと廃棄ロスを低減し、店舗の利益を向上するため、適切な値引きを進めてきた。だが、値引きの金額やタイミングはオーナーや店長、ベテラン店員の経験や勘などで決められており、課題も多かった。AIを活用することで、こうした課題解決につなげたい考えだ。